卦辞と爻辞
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泰の卦を例に、卦全体に付く一つの卦辞と、一本ずつの線に付く六つの爻辞を見分けます。彖伝や象伝は解釈の層として別に置き、読む前に文の居場所を決める手順を示します。
要点を先に約8分で読めます
『周易』の卦には、卦全体に向かう卦辞が一つと、六本の線にそれぞれ向かう爻辞が付いています。文を読む最初の一歩は、その文がどの単位に属するかを決めることです。
- 泰の卦の文は七つで、単位ごとに分かれます。最初の一つは図形全体に、残る六つは下から順に一本ずつの線に向かいます。
- 同じ字が二か所に出ても、向かう範囲は同じではありません。卦辞の「往」は全体を見て、九三の「往」は第三爻にだけ当たります。
- 『繋辞上伝』の「彖」は卦の下の文をさし、『彖伝』はそれを解釈する別の文です。名は同じでも層が違うので、前後を見て区別します。

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一つの卦に七つの文:まず単位を数える
『周易』の泰の卦を開くと、卦名の後ろの文は一つの塊ではなく、七つに分かれています。最初の一つは卦全体に向かい、残る六つはそれぞれ一本の線に向かいます。読む前に、いま見ている文がどれなのかを見分けます。
泰を例にした文の構造図:卦辞一つと爻辞六つで七つ。爻辞は上から下に並べ、図形の下から数えた六本の線と一つずつ対応します。
七つの順は図形に対応します。卦辞は最初に置かれ、上下二つの三爻の卦が重なった図形全体に向かいます。爻辞は爻ごとに並び、どの爻かを冒頭で示します。たとえば「初九」「上六」です。「初」はいちばん下、「上」はいちばん上で、下から数える順と同じです。名前の中の「九」「六」の意味は、爻の位置と九・六の記事で扱います。
まず覚える三つの名
- 卦辞
- 卦全体に付く文。向かう先は、上下二つの卦が重なった図形全体です。一つの卦に一つあります。
- 爻辞
- 一本の爻に付く文。向かう先は、冒頭で名指しされたその線だけです。六十四卦のどれにも六つあります。
- 用九・用六
- 乾には六つの爻辞の後にもう一つ「用九」があり、坤には「用六」があります。ウィキソース(中国語版)の『周易』では、この二つの卦だけがそうなので、乾と坤は八つ、残りの六十二卦は七つです。
卦辞:図形全体に向かう一文
泰は乾が下、坤が上に重なった卦で、下から数えると陽の線が三本、陰の線が三本です。卦辞は一文だけで、卦名のすぐ後に置かれ、この図形全体に向かいます。
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泰は、小さいものが往き、大きいものが来る。吉であり、事は通じる。
この文には「初」「二」「上」のような位置を表す語がなく、どの線も名指ししていません。だから読むときは全体を見ます。下の卦は何か、上の卦は何か、二つがどう重なってこの卦になったか。上下の卦がどう重なって一つの卦になるかは、上下の卦の組み方にあります。「往」と「来」は向きを言う語で、注釈者によって説明が分かれます。ここで確かめるのは、この文がどの単位に属するかだけです。
孔穎達は『繋辞上伝』の疏を書くとき、まさにこの一文を例に引いています。
「彖とは象を言うもの」であり、象には大小がある。だから物の大小を分け整えることは卦にある。たとえば泰は「小は往き大は来る、吉にして亨る」、否は「大は往き小は来る」といった類がそれである。
彼は泰のこの文を「卦」の層に置いて、その句の例にしています。これは卦全体の小と大を分けるもので、ある一本の爻の得失を量るものではありません。
爻辞:一本の線だけに向かう
泰の六つの爻辞は、それぞれ一本の線に付いています。冒頭でまず名指しします。「初九」はいちばん下の第1爻、「上六」はいちばん上の第6爻です。
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比べると、卦辞は名指しをせず、爻辞は必ず名指しをします。爻辞の内容は名指しされた爻に落ち、自動的に卦全体の言葉になることはありません。泰の二つを見ます。
二つの爻辞、それぞれの居場所
茅を引き抜くと、根が連なって仲間も一緒に抜ける。進んで行けば吉。
いちばん下の線だけに向かう文で、冒頭の「初」がすでに位置を示しています。
平らなだけで傾かないものはなく、去るだけで戻らないものもない。困難の中でも貞しければ咎はない。その誠を気に病むな。食には福がある。
ここにも「往」の字がありますが、第3爻に属し、卦辞の「往」とは別の単位です。互いに代わりにはなりません。
『繋辞上伝』の第三章は、この二種類の文を並べて述べています。孔穎達の疏が順に説明します。
彖とは、象を言うものである。爻とは、変を言うものである。……辞とは、それぞれが向かう先を指すものである。
- 「彖は象を言う」:疏は、彖を卦の下の辞とし、一つの卦の象を述べるものと説明します。だから卦全体に向かいます。
- 「爻は変を言う」:疏は、爻の下の辞で、その爻の象の変化を述べるものと説明します。だから一本の爻に向かいます。
- 「辞はそれぞれ向かう先を指す」:疏は、卦辞も爻辞も、それぞれの卦や爻の向かう先を指すと説明します。つまり、どの辞も自分の単位とともに動きます。
単位に従って読む:文をそれぞれの場所に戻す
卦や爻の文に出会ったら、すぐ説明しようとせず、三段階で居場所を決めます。どの層の文か、卦全体か一本の線か、そして字面は何を言っているか。
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層を決める
卦辞と爻辞は原文です。その後ろに「彖に曰く」「象に曰く」と続くものは、原文を解釈する別の層です。
向かう先を決める
卦辞は卦全体。爻辞は冒頭で名指しされた爻を見て、下から数えます。初、二、三、四、五、上の順です。
それから字面を読む
向かう先が決まってから字面を読み、その場所に戻します。卦辞は図形全体に、爻辞は上下の卦の中のその一本の線に戻します。
上の表は、後ろの二列を隠して自分で判断してみてください。①には位置を表す語がなく、卦全体に向かいます。③には「上六」という名指しがあるので、いちばん上の第6爻だけに向かいます。④は「象に曰く」の下にあり、第1爻に対応していますが、爻辞そのものではなく、解釈の層の文です。
『繋辞上伝』の第二章は、君子は「居るときはその象を観て、その辞を玩ぶ」と言います。まず象を見て、それから辞をじっくり味わうということです。正しく味わうには、その辞が何に付いているかを知らなければなりません。だから居場所を先に決め、意味はその後で考えます。
解釈の層と六爻:七つの文に入らない言葉
同じ頁で、卦辞と爻辞の後に続く「彖に曰く」「象に曰く」は、別の層の文です。原文を解釈するもので、それ自体は卦辞でも爻辞でもありません。
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泰では、頁にまず卦辞と六つの爻辞が並び、続いて「彖に曰く」で始まる一節、さらに「象に曰く」で始まる一群があります。この二つは『易伝』に属し、伝統的に十翼にまとめられます。それぞれの構造と読み方は、十翼を専門に扱う別の記事に譲ります。ここでは、それらが原文にどう付いているかだけを見ます。
『彖伝』は、まず卦辞の原文をそのまま繰り返し(「泰は、小は往き大は来る、吉にして亨る」)、そのあとで解釈を広げます。『象伝』は、最初の一つが卦全体に向かい(泰では「天地が交わるのが泰である」という一文から始まります)、そのあとに爻ごとの文が一つずつ続きます。たとえば初九の「茅を引き抜くと、根が連なって仲間も一緒に抜ける。進んで行けば吉」に対応する象伝は、次の一文だけです。
「茅を抜いて進めば吉」とは、志が外にあるということである。
「志が外にある」は一つの理由づけで、爻辞の外に書かれ、初九を解釈しています。爻辞のあとに書かれた一つの言い方で、参照する価値はありますが、爻辞そのものではありません。引用するときは出典が『象伝』だと明示します。
納甲六爻に移ると、同じ卦でも使う材料が違います。六爻には、納甲の干支、世と応、用神といった独自の取り方があり、卦辞・爻辞の文を読む読み方とは別です。二つが互いに代わりにならないための整理は、卦爻辞の読みと納甲六爻にあります。
読んだあとの疑問
卦辞と爻辞は、切り離して単独で読んでもよいですか。
分けて読んで構いません。ただし毎回どちらを読むのかを示し、向かう先に戻します。卦辞は図形全体に、爻辞は上下の卦の中のその一本の線に戻します。分けるのは層を混ぜないためで、文を卦から切り離すことではありません。
『彖伝』と、『繋辞上伝』にある「彖」は同じものですか。
同じ層ではありません。『繋辞上伝』の「彖」は、孔穎達の疏では卦の下の辞をさします。『彖伝』は原文のあとに置かれ、「彖に曰く」で始まる別の解釈文です。名が同じなので、出てくる位置と前後で判断します。
卦辞や爻辞を読めば、そのまま吉凶の結論が出ますか。
文中には「吉」「咎なし」といった語がありますが、それぞれ載っている辞の中だけのことで、その卦またはその爻について言うものです。具体的な問いに使うには、卦の立て方や読みの規則が間に入ります。それらは別の記事で説明します。
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この記事を含む学習ルート
易経:経伝から卦爻と読解へ · 公開中の 9 ステップのうち 6


