渙卦:散るものと、集まる場所
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渙は六十四卦の第五十九卦で、上が巽(風)、下が坎(水)。卦辞の「王は宗廟に至る」、大象の「供え物をし、廟を立てる」、そして爻辞で「渙」の後に几・身・群れ・号令・王の居・血と続く散り方から、散ることと集まることを読みます。
要点を先に約6分で読めます
渙は「散る」ことですが、爻ごとに散るものが違います。几、身、群れ、号令、王の居、血。それでも大象は先王を宗廟に連れ戻します。
- 渙は巽(風)の下に坎(水)を重ねた卦。彖伝は「木に乗って功がある」と言う。巽は木で、坎の水の上にある。
- 卦辞の二句目は「王は宗廟に至る」、大象は「供え物をし、廟を立てる」。卦辞も大象も宗廟に行き着く。序卦伝は渙を「離れること」と説明する。
- 六つの爻辞では、「渙」の後の対象が次々変わる。その几、その身、その群れ、汗のような号令、王の居、その血。六つのうち、凶と書かれたものはない。

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水の上を風が行く:上が巽、下が坎
渙は、巽(風)が上、坎(水)が下の卦です。説卦伝は巽に「入る」の一字と木・風の象を、坎に「陥る」の一字と水の象を与えます。線を下から順に挙げると、陰・陽・陰、さらに陰・陽・陽。坎は陽爻が一本、上下の陰爻二本に挟まれた形、巽は陰爻の上に陽爻が二本です。
渙と綜卦の節:渙のいちばん下の陰爻は、節ではいちばん上に来ます。
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渙卦の三つの言葉
- 渙
- 散ること、離れること。序卦伝が直接説明している。「渙とは離れること」。
- 至る
- 卦辞「王は宗廟に至る」の動詞を、伝統的には「いたる」と読む。王が宗廟に着く、ということ。
- 木に乗る
- 彖伝に「木に乗って功がある」。説卦伝では巽は木、坎は水なので、水の上の木、つまり舟と読める。
卦辞と彖伝:王は宗廟に至り、大きな川を渡る
渙の卦辞は「通る。王は宗廟に至る。大きな川を渡るのによい。正しさを守るのによい」。四句のうち二句が具体的な場面、宗廟と大きな川です。彖伝は順に説明します。
渙、通る。剛が来て行き詰まらず、柔が外で位を得て、上と心を同じくする。「王は宗廟に至る」とは、王が中にいるということ。「大きな川を渡るのによい」とは、木に乗って功があるということ。
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これらは図で確かめられます。「剛が来て行き詰まらず」は、伝統的には九二のこと。陽爻が下卦の坎の真ん中に来て、閉じ込められていません。「柔が外で位を得て、上と心を同じくする」は、六四が陰爻で第四位(陰の位)にあり、外卦(「外」)にあって、すぐ上に九五がいること。そのあとに「王は宗廟に至り、王は中にいる」と続きます。最後が「木に乗る」。上の巽が木、下の坎が水で、木に乗って水を渡るのです。
大象:水の上を風が行く、先王は供えて廟を立てた
渙の大象は次のとおりです。
風が水の上を行く、これが渙。先王はこれにならい、天帝に供え物をし、廟を立てた。
風が水面を吹き渡ります。伝統的には、次のように読まれます。水の波紋が四方へ広がる。先王はここから行いを得て、天帝に供え物をし、廟を立て、離れた心を共通の祭りのもとに集めた。
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渙は散ることなのに、大象は集まることで終わります。この落ち着き先は、卦の中で初めてではありません。卦辞の二句目がすでに「王は宗廟に至る」で、大象が「廟を立てる」で閉じるので、卦辞も大象も宗廟に行き着きます。この大象の書き出しは「君子」ではなく「先王」です。
六つの爻:「渙」の後に来るもの
六つの爻辞では、「渙」の後に来るものが、ほとんど爻ごとに違います。
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いちばん下の初六の爻辞には「渙」の字がなく、まず「救うのに壮健な馬を用いる」。小象は「従う」。九二は「散るなかで、几へ走る」。几は、伝統的には低い机、寄りかかるものと読みます。散るとき、寄りかかれるものへ走る。小象は「願いがかなう」。六三は「その身を散じる、悔いなし」で、自分の体まで散りのなかに入れます。小象は「志は外にある」。六四は「その群れを散じる、大いに吉」。続けて「散じて丘ができる。常人の思いの及ばぬこと」。伝統的には、散ったものがかえって盛り土になる、と読まれます。小象は「輝かしく大きい」と評します。
九五は「汗のように大号令を散らし、王の居を散じる。咎めなし」。伝統的には、汗は、出たら取り戻せない号令にたとえられます。小象は「位が正しい」。九五は第五位にいます。上九は「その血を散じ、遠くへ去って出る。咎めなし」。小象は「害から遠ざかる」です。
対象を並べて見ると、几、身、群れ。号令と王の居は上の位にあるもの。最後が血で、遠くへ送られます。結果は、吉、悔い消える、悔いなし、大いに吉、咎めなし、咎めなしで、凶と書かれたものは一つもありません。
節・豊・頤:渙の隣の卦と、兌のあとに置かれる理由
渙の綜卦は節で、上の図にあります。錯卦は豊で、渙の六本の線を一つ残らず反対にすると現れます。互卦は頤で、内側の線から、下に震(陽・陰・陰)、上に艮(陰・陰・陽)が組まれます。
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序卦伝は渙を兌のあとに置きます。
悦んでそのあと散る。だから渙が続く。渙とは離れること。
まず悦び、それから散る。渙の次は節で、序卦伝の理由は、離れたまま終わることはできないから、節度がいる、というものです。序卦伝で豊は「大」を意味し、渙は散ることなので、この錯卦の組は、片方が盛大、片方が離散になります。
読んだあとの疑問
渙は「散る」のだから、悪い卦ですか。
そうは書かれていません。卦辞は「通る」で始まり、六つの爻辞は「吉」「悔い消える」「悔いなし」「大いに吉」「咎めなし」で、凶と書くものは一つもありません。序卦伝は、離れたままではいられないので、次の節が続く、と言うだけです。
「汗のように大号令を散らす」の汗とは何ですか。
字面は汗です。伝統的には、命令にたとえて読まれます。出た汗は戻せず、出した命令も取り消せない、という比喩です。この比喩は後の読み手によるもので、原文は「汗のように大号令を散らす」と書くだけです。
渙と節はどういう関係ですか。
互いに綜卦です。渙を上下逆にすると節になります。渙は水の上の風、節は沢の上の水。序卦伝の並びは兌・渙・節で、悦び、散る、そして節度、の順です。
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