知識ライブラリー
HEX-043 / 共通の方法

夬卦:まず宣言し、そして決す

コンテンツ版 · · 資料・出典

夬卦:決めるとは、まず口に出すこと

夬は六十四卦の第四十三卦で、上が兌(沢)、下が乾(天)、陽五本に陰一本。卦辞が最初に口にする三つの動作と「兵に就くはよくない」、彖伝の「決して和す」、そして爻辞の足の指・頬骨・尻と、二つの「夬夬」、三つの「叫び」から、「決める」の書かれ方を読みます。

要点を先に約7分で読めます

夬は決めることですが、卦辞の決めるは、口に出すことから始まります。王の庭で宣言し、誠をもって叫び、自分の町から告げ、ただし兵は用いない。六つの爻辞は決め方のいくつかの姿を書き、最後の一つは「叫びなし」です。

  • 夬は乾(天)の上に兌(沢)を置いた卦で、六本のうち最上の一本だけが陰。彖伝は「柔が五剛に乗る」と言う。「剛が伸びて終わる」は、陽爻が第五位まで伸びたこと。
  • 卦辞はまず口に出す三つの動作、王の庭で宣言し、誠をもって叫び、町から告げる、を挙げ、そのあと「兵に就くはよくない」と言う。彖伝は「健やかで悦び、決して和す」と読む。
  • 初九の足の指、九三の頬骨、九四の尻が、それぞれ一つの歩き方を書く。「夬夬」は九三と九五に、「叫び」は卦辞・九二・上六に出て、上六は「叫びなし」。
18秒で、夬卦の陽五本と陰一本、卦辞の「宣言」、爻辞の「夬夬」と「叫びなし」、読む前の三つの問いを持ち帰ります。

先に読む

六十四卦:上下の卦の組み合わせと、卦名の調べ方 ↗

卦辞と爻辞:全体の言葉か、一本の線の言葉か ↗

天の上に沢:陽五本に陰一本

夬は、下卦が乾(天)、上卦が兌(沢)です。説卦伝では、乾は「健」、兌は「説」(悦ぶ)。六本の爻のうち、下から第五位までは陽爻で、陰爻があるのは最上位だけです。彖伝はこの形に「柔が五剛に乗る」という名を与えます。一本の柔が、五本の剛の上に乗っている形です。

夬とその綜卦の姤を並べる:左は夬で、下に陽爻が五本、いちばん上に陰爻が一本、下卦は乾(天)、上卦は兌(沢)。右は姤で、いちばん下に陰爻が一本、上に陽爻が五本、下卦は巽(風)、上卦は乾(天)。姤は夬を上下逆にしたもの。線は下から数える。元の図を開いて拡大する

夬と綜卦の姤:上下逆にすると、夬の最上位にある一本の陰爻は、姤ではいちばん下に来ます。

上卦:兌陽・陽・陰、沢、悦ぶ下卦:乾陽爻三本、天、健やか
図を拡大 · 横にスクロールして読む
上卦:兌陽・陽・陰、沢、悦ぶ下卦:乾陽爻三本、天、健やか
夬は上下二つの層:沢が上、天が下。下卦は整った陽爻三本で、上卦の最上位だけが陰。

三つの語:夬・柔が五剛に乗る・戎

夬
彖伝がすぐ定義する。夬とは決めること、剛が柔を決すること。読みは「かい」、字面は決める、切り開く。
柔が五剛に乗る
六本のうち陰は上六だけで、五本の陽爻の上にある。彖伝がこの形をまとめて言う語。
戎
兵と戦い。卦辞に「兵に就くはよくない」、九二に「夜に兵あり」と出る。同じ字が二か所にある。

卦辞と彖伝:まず口に出し、兵は先に出さない

夬の卦辞は、動作の連なりです。「王の庭で宣揚し、誠をもって叫び、危うさがあり、自分の町から告げ、兵に就くはよくない。行く所があるのによい」。

夬とは決めること、剛が柔を決することだ。健やかで悦び、決して和す。「王の庭で宣揚する」とは、柔が五剛に乗るということ。「誠をもって叫び、危うさがある」とは、その危うさがかえって明るくなるということ。「自分の町から告げ、兵に就くはよくない」とは、尊ぶものがそこで窮まるということ。「行く所があるのによい」とは、剛が伸びきるということだ。

彖伝・夬(訳)
卦辞:まず口に出す宣揚する王の庭で叫ぶ誠をもって告げる町から彖伝:決して和す健やかで悦ぶ乾と兌決して和す対立しない兵は用いない窮まる
図を拡大 · 横にスクロールして読む
卦辞:まず口に出す宣揚する王の庭で叫ぶ誠をもって告げる町から彖伝:決して和す健やかで悦ぶ乾と兌決して和す対立しない兵は用いない窮まる
卦辞は、口に出す三つの動作を先に挙げる。王の庭で宣揚し、誠をもって叫び、町から告げる。彖伝は「健やかで悦び、決して和す」と読み、兵に就かない理由を説明する。

卦辞は、決めるのが何によるかを言わず、先に口に出すべきことをいくつか並べ、そのあとで兵を退けます。彖伝はまず卦の徳を示します。下卦の乾は「健」、上卦の兌は「説」だから「健やかで悦ぶ」。決めることが同時に和であるから「決して和す」。

「誠をもって叫び、危うさがあり、その危うさが明るくなる」とは、誠を込めて呼びかけるときには危うさがあり、彖伝はそれが「明るく」なると言います。隠さず堂々としたものになる、ということです。「尊ぶものが窮まる」は、兵に就けば、尊んでいたものが行き詰まるということ。最後の「剛が伸びて終わる」は、卦の形に照らして読めます。陽爻は最下位から第五位まで続き、最上位だけがまだ陰で、伸びきったところです。

大象:天の上に沢、施し、積むを忌む

夬の大象は、短い一句です。

天の上に沢がある、これが夬。君子はこれにならい、禄を下の者に施し、徳に居ることは忌まれる。

象伝・夬(訳)

「天の上に沢がある」、沢が天より上にあり、水が最も高い所に集まっています。「決」の字には水偏があり、字面は水が堤を切って流れ出すこと。沢が天の上に昇った姿を、この字義に並べて見ることができます。君子の行いは半分が行い、半分が忌みです。禄を下に施し、徳に居ることを忌む。

象:天の上に沢上の兌:沢、悦ぶ下の乾:天、健やか君子は:行いと忌み禄を施す:下の者へ徳に居る:忌まれる
図を拡大 · 横にスクロールして読む
象:天の上に沢上の兌:沢、悦ぶ下の乾:天、健やか君子は:行いと忌み禄を施す:下の者へ徳に居る:忌まれる
夬の大象:先に天の上の沢の象、次に君子の行いを、行いと忌みの二つで言う。禄を下に施し、徳に居ることを忌む。

「禄を下に施す」は、自分の禄を下の者に与えること。「徳に居ることは忌まれる」の「居る」は、そこに腰を据えること、ためこむこと。徳を自分の身にためこむことが忌まれる、という意味です。伝統的には、恩徳を積み上げて下に分けないことが忌まれる、と読まれます。

六本の爻:足の指、頬骨、尻、二つの「夬夬」、一つの「叫びなし」

夬の六つの爻辞のうち、三つは体の部分を書いています。足の指、頬骨、尻です。

爻位爻辞小象初九前の足指に力む、勝てない勝てず往くは咎九二警戒の叫び、夜に兵中の道を得た九三頬骨に力む、君子は夬夬終に咎めなし九四尻に皮なし、歩みがもたつく位が不適、聞き分けない九五野草を夬夬、中を行く中はまだ明るくない上六叫びなし、終に凶終に長続きしない
図を拡大 · 横にスクロールして読む
爻位爻辞小象初九前の足指に力む、勝てない勝てず往くは咎九二警戒の叫び、夜に兵中の道を得た九三頬骨に力む、君子は夬夬終に咎めなし九四尻に皮なし、歩みがもたつく位が不適、聞き分けない九五野草を夬夬、中を行く中はまだ明るくない上六叫びなし、終に凶終に長続きしない
夬の六つの爻辞と小象:初九・九三・九四が足の指・頬骨・尻を書き、九三と九五に「夬夬」が二つ、九二の警戒の叫びと上六の「叫びなし」がある。

初九の「前の足指に力む」は、前の足の指が強く、先へ突き進むこと。「往って勝てなければ咎」、小象は「勝てずに往くのは咎」と言います。九三の「頬骨に力む」は「凶」。「頄」は、伝統的には頬骨と読まれます。九四の「尻に皮がなく、歩みがもたつく」は、皮のない尻で、よろよろ歩くこと。「羊を牽けば悔いは消える」、「言葉を聞いても信じない」。小象は二つ評します。位が不適であること、そして聞き分けがはっきりしないこと。

「夬夬」は二つの爻に出て、どちらも陽の位にあります。九三は「君子は夬夬、独り行って雨に遇い、濡れて怒りを含むが、咎めなし」。決め、さらに決め、一人で行き、雨に降られ、濡れて腹を立てるが、咎めはなく、小象は「終に咎めなし」と言います。九五は「野草を夬夬、中を行けば咎めなし」。野草は、伝統的には草の一種と読まれます。小象の評は「中はまだ明るくない」で、真ん中にいても、まだ明るくはないのです。

「叫び」は三か所に出ます。卦辞の「誠をもって叫ぶ」は、誠のこもった呼びかけ。九二の「警戒の叫び、夜に兵あり、憂えるな」には、小象が「中の道を得た」と言います。上六の「叫びなし、終に凶」には、小象が「終に長続きしない」と言います。卦辞は先に口に出すことを求め、最上位の爻辞は、何も口に出さない爻です。

剥・姤・乾:夬の隣の卦

夬は陽五本に陰一本で、陰は最上位。錯卦の剥はちょうど反対で、陰五本に陽一本、陽は最上位です。夬を上下逆にすると、その陰爻は最上位から最下位へ移って姤になるので、夬の綜卦は姤です(冒頭の図)。互卦は乾で、夬の真ん中の四本はすべて陽爻だから、第二〜第四の爻を取っても第三〜第五の爻を取っても乾になり、上下とも乾です。

錯卦:剥123456互卦:乾123456
図を拡大 · 横にスクロールして読む
錯卦:剥123456互卦:乾123456
剥と乾を並べる:剥は五本の陰が一本の陽を載せる形、乾は陽爻六本。夬の内側は乾で、いちばん外の位だけが陰。

序卦伝は、益の次に夬を、夬の次に姤を置きます。益が止まらなければ裂け目が生じ、裂けたあとには必ず出会いがある、という筋道です。

読んだあとの疑問

夬卦は、思い切って取り除けと主張しているのですか。

原文の夬のやり方は、まず口に出すことで、兵に就くのはよくないとはっきり言います。彖伝は「決して和す」と言います。爻辞には「夬夬」で咎めのないものもあれば、「往って勝てない」「歩みがもたつく」のように、決め方が行き過ぎたり迷ったりするものもあります。

「前の足指に力む」「尻に皮がない」とは、どういう意味ですか。

字面は、足の指が強いこと、尻に皮がないこと。一つは先へ突き進んで勝てないこと、もう一つはよろよろ歩くことで、どちらも決断の途中でうまくいかない歩き方を書いています。九三の「頄」は、伝統的には頬骨と読まれます。

「徳に居ることは忌まれる」とは、どういう意味ですか。

字面は、徳を自分の中にためこむことが忌まれる、ということです。すぐ前の「禄を下に施す」と対になっていて、伝統的には、恩徳を積み上げて下に分けないことと読まれます。

この記事は役に立ちましたか?

資料・出典

  1. 周易·夬(Wikisource 中文版:卦辞、爻辞、彖、象) ↗
  2. 说卦传(Wikisource 中文版):乾健、兑说 ↗
  3. 序卦传(Wikisource 中文版) ↗

続けて読む

益卦:風と雷、「上から下へ」から「益す者なく、撃つ者あり」まで ↗

姤卦:一陰が五陽に遇う、「縛る」「包む」から「角」まで ↗

六十四卦:上下の卦の組み合わせと、卦名の調べ方 ↗

卦辞と爻辞:全体の言葉か、一本の線の言葉か ↗