夬卦:まず宣言し、そして決す
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夬は六十四卦の第四十三卦で、上が兌(沢)、下が乾(天)、陽五本に陰一本。卦辞が最初に口にする三つの動作と「兵に就くはよくない」、彖伝の「決して和す」、そして爻辞の足の指・頬骨・尻と、二つの「夬夬」、三つの「叫び」から、「決める」の書かれ方を読みます。
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夬は決めることですが、卦辞の決めるは、口に出すことから始まります。王の庭で宣言し、誠をもって叫び、自分の町から告げ、ただし兵は用いない。六つの爻辞は決め方のいくつかの姿を書き、最後の一つは「叫びなし」です。
- 夬は乾(天)の上に兌(沢)を置いた卦で、六本のうち最上の一本だけが陰。彖伝は「柔が五剛に乗る」と言う。「剛が伸びて終わる」は、陽爻が第五位まで伸びたこと。
- 卦辞はまず口に出す三つの動作、王の庭で宣言し、誠をもって叫び、町から告げる、を挙げ、そのあと「兵に就くはよくない」と言う。彖伝は「健やかで悦び、決して和す」と読む。
- 初九の足の指、九三の頬骨、九四の尻が、それぞれ一つの歩き方を書く。「夬夬」は九三と九五に、「叫び」は卦辞・九二・上六に出て、上六は「叫びなし」。

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天の上に沢:陽五本に陰一本
夬は、下卦が乾(天)、上卦が兌(沢)です。説卦伝では、乾は「健」、兌は「説」(悦ぶ)。六本の爻のうち、下から第五位までは陽爻で、陰爻があるのは最上位だけです。彖伝はこの形に「柔が五剛に乗る」という名を与えます。一本の柔が、五本の剛の上に乗っている形です。
夬と綜卦の姤:上下逆にすると、夬の最上位にある一本の陰爻は、姤ではいちばん下に来ます。
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三つの語:夬・柔が五剛に乗る・戎
- 夬
- 彖伝がすぐ定義する。夬とは決めること、剛が柔を決すること。読みは「かい」、字面は決める、切り開く。
- 柔が五剛に乗る
- 六本のうち陰は上六だけで、五本の陽爻の上にある。彖伝がこの形をまとめて言う語。
- 戎
- 兵と戦い。卦辞に「兵に就くはよくない」、九二に「夜に兵あり」と出る。同じ字が二か所にある。
卦辞と彖伝:まず口に出し、兵は先に出さない
夬の卦辞は、動作の連なりです。「王の庭で宣揚し、誠をもって叫び、危うさがあり、自分の町から告げ、兵に就くはよくない。行く所があるのによい」。
夬とは決めること、剛が柔を決することだ。健やかで悦び、決して和す。「王の庭で宣揚する」とは、柔が五剛に乗るということ。「誠をもって叫び、危うさがある」とは、その危うさがかえって明るくなるということ。「自分の町から告げ、兵に就くはよくない」とは、尊ぶものがそこで窮まるということ。「行く所があるのによい」とは、剛が伸びきるということだ。
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卦辞は、決めるのが何によるかを言わず、先に口に出すべきことをいくつか並べ、そのあとで兵を退けます。彖伝はまず卦の徳を示します。下卦の乾は「健」、上卦の兌は「説」だから「健やかで悦ぶ」。決めることが同時に和であるから「決して和す」。
「誠をもって叫び、危うさがあり、その危うさが明るくなる」とは、誠を込めて呼びかけるときには危うさがあり、彖伝はそれが「明るく」なると言います。隠さず堂々としたものになる、ということです。「尊ぶものが窮まる」は、兵に就けば、尊んでいたものが行き詰まるということ。最後の「剛が伸びて終わる」は、卦の形に照らして読めます。陽爻は最下位から第五位まで続き、最上位だけがまだ陰で、伸びきったところです。
大象:天の上に沢、施し、積むを忌む
夬の大象は、短い一句です。
天の上に沢がある、これが夬。君子はこれにならい、禄を下の者に施し、徳に居ることは忌まれる。
「天の上に沢がある」、沢が天より上にあり、水が最も高い所に集まっています。「決」の字には水偏があり、字面は水が堤を切って流れ出すこと。沢が天の上に昇った姿を、この字義に並べて見ることができます。君子の行いは半分が行い、半分が忌みです。禄を下に施し、徳に居ることを忌む。
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「禄を下に施す」は、自分の禄を下の者に与えること。「徳に居ることは忌まれる」の「居る」は、そこに腰を据えること、ためこむこと。徳を自分の身にためこむことが忌まれる、という意味です。伝統的には、恩徳を積み上げて下に分けないことが忌まれる、と読まれます。
六本の爻:足の指、頬骨、尻、二つの「夬夬」、一つの「叫びなし」
夬の六つの爻辞のうち、三つは体の部分を書いています。足の指、頬骨、尻です。
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初九の「前の足指に力む」は、前の足の指が強く、先へ突き進むこと。「往って勝てなければ咎」、小象は「勝てずに往くのは咎」と言います。九三の「頬骨に力む」は「凶」。「頄」は、伝統的には頬骨と読まれます。九四の「尻に皮がなく、歩みがもたつく」は、皮のない尻で、よろよろ歩くこと。「羊を牽けば悔いは消える」、「言葉を聞いても信じない」。小象は二つ評します。位が不適であること、そして聞き分けがはっきりしないこと。
「夬夬」は二つの爻に出て、どちらも陽の位にあります。九三は「君子は夬夬、独り行って雨に遇い、濡れて怒りを含むが、咎めなし」。決め、さらに決め、一人で行き、雨に降られ、濡れて腹を立てるが、咎めはなく、小象は「終に咎めなし」と言います。九五は「野草を夬夬、中を行けば咎めなし」。野草は、伝統的には草の一種と読まれます。小象の評は「中はまだ明るくない」で、真ん中にいても、まだ明るくはないのです。
「叫び」は三か所に出ます。卦辞の「誠をもって叫ぶ」は、誠のこもった呼びかけ。九二の「警戒の叫び、夜に兵あり、憂えるな」には、小象が「中の道を得た」と言います。上六の「叫びなし、終に凶」には、小象が「終に長続きしない」と言います。卦辞は先に口に出すことを求め、最上位の爻辞は、何も口に出さない爻です。
剥・姤・乾:夬の隣の卦
夬は陽五本に陰一本で、陰は最上位。錯卦の剥はちょうど反対で、陰五本に陽一本、陽は最上位です。夬を上下逆にすると、その陰爻は最上位から最下位へ移って姤になるので、夬の綜卦は姤です(冒頭の図)。互卦は乾で、夬の真ん中の四本はすべて陽爻だから、第二〜第四の爻を取っても第三〜第五の爻を取っても乾になり、上下とも乾です。
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序卦伝は、益の次に夬を、夬の次に姤を置きます。益が止まらなければ裂け目が生じ、裂けたあとには必ず出会いがある、という筋道です。
読んだあとの疑問
夬卦は、思い切って取り除けと主張しているのですか。
原文の夬のやり方は、まず口に出すことで、兵に就くのはよくないとはっきり言います。彖伝は「決して和す」と言います。爻辞には「夬夬」で咎めのないものもあれば、「往って勝てない」「歩みがもたつく」のように、決め方が行き過ぎたり迷ったりするものもあります。
「前の足指に力む」「尻に皮がない」とは、どういう意味ですか。
字面は、足の指が強いこと、尻に皮がないこと。一つは先へ突き進んで勝てないこと、もう一つはよろよろ歩くことで、どちらも決断の途中でうまくいかない歩き方を書いています。九三の「頄」は、伝統的には頬骨と読まれます。
「徳に居ることは忌まれる」とは、どういう意味ですか。
字面は、徳を自分の中にためこむことが忌まれる、ということです。すぐ前の「禄を下に施す」と対になっていて、伝統的には、恩徳を積み上げて下に分けないことと読まれます。
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