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HEX-032 / 共通の方法

恒卦:雷風相与、方向を変えない

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恒卦:久しさは不動ではない

恒は六十四卦の第三十二卦で、上が震(雷)、下が巽(風)。卦辞の「行くところがあるのによい」、彖伝の「終わればまた始まる」、大象の「立って方向を変えない」から、六つの爻辞が示す恒の求め方のずれまで、「久しさ」の考え方を読みます。

要点を先に約7分で読めます

恒の名は「久しい」ですが、卦の象は八卦のなかで特に落ち着かない雷と風です。原文は「終わればまた始まる」と「立って方向を変えない」で答えます。久しさとは一区切りずつ続くこと、変えないのは方向です。

  • 恒は震(雷)の下に巽(風)を重ねた卦。彖伝は「剛が上、柔が下」「入って動く」「剛柔みな応じる」を挙げ、三組の爻の位置はたしかにどれも陰と陽の組になっている。
  • 彖伝は日月・四季・聖人で「久しさ」を説明し、変化のなかで続くとはっきり言うのは四季だけ。卦辞の最後の句「行くところがあるのによい」は、「終わればまた始まる」と説明される。
  • 大象が変えないとしたのは動きでなく方向。爻辞では、深く掘りすぎる・徳が定まらない・居るべきでない場所に居る・揺さぶる、が恒の求め方のずれとして並ぶ。
18秒で、恒卦の六本の爻を数え、爻辞を「続く」と「ずれる」に分け、読む前の三つの問いを持ち帰ります。

先に読む

六十四卦:上下の卦の組み合わせと、卦名の調べ方 ↗

卦辞と爻辞:全体の言葉か、一本の線の言葉か ↗

雷が上、風が下:落ち着かない二つのもの

恒は、上に震(雷)、下に巽(風)を重ねた卦です。説卦伝は三爻の卦にそれぞれ一字を与え、震は「動く」、巽は「入る」と言います。さらに、万物を動かすのに雷より速いものはなく、万物をたわめるのに風より速いものはない、と述べ、最後に「雷と風は互いに逆らわない」と添えます。

恒とその綜卦の咸を並べる:左は恒で、下から陰・陽・陽・陽・陰・陰、下卦は巽(風)、上卦は震(雷)。右は咸で、恒を上下逆さにしたもの、下卦は艮(山)、上卦は兌(沢)。線は下から数える。元の図を開いて拡大する

恒と綜卦の咸:綜卦は全体を上下逆にしたもので、震は上下逆になって艮に、巽は兌になり、咸が得られます。

「続く」を意味する卦の象に、八卦のなかでも特に落ち着かない二つが選ばれている。これがこの卦を読む最初の手がかりです。ここでの恒は静止ではなく、止むことのない二種類の動きのあいだで、まとまりを保つことです。

彖伝は卦の形から三つのことを数えます。「剛が上で柔が下」「入って動く」「剛柔みな応じる」。三つ目はそのまま確かめられます。初と四、二と五、三と上の三組は、どれも陰と陽の組です。

組下卦の爻上卦の爻初と四初六・陰九四・陽二と五九二・陽六五・陰三と上九三・陽上六・陰
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組下卦の爻上卦の爻初と四初六・陰九四・陽二と五九二・陽六五・陰三と上九三・陽上六・陰
恒の三組の爻:初六と九四、九二と六五、九三と上六は、どれも陰と陽の組。だから彖伝は「剛柔みな応じる」と言う。

彖伝の三つの言い方

剛が上で柔が下
震は陽の爻が一本、巽は陰の爻が一本だけ。伝統的にはこの少数の爻で剛柔を決めるので、剛の震が上、柔の巽が下になる。
入って動く
下卦の「入る」と上卦の「動く」を一つの「て」でつなぐ。入りながら、動く。
剛柔みな応じる
三組とも陽と陰の組なので「みな」と言う。

卦辞と彖伝:変わることで長く続く

恒の卦辞は「通る。咎めはない。正しさを守るのによい。行くところがあるのによい」。最後の句は少し意外です。「久しい」という名の卦が、行き先があるのはよいと言い切るのですから。彖伝はまず卦名を「恒とは久しいことだ」と説明し、続けて、久しさがどう成り立つかを例で答えます。

日月は天に拠って、長く照らすことができる。四季は移り変わって、長く物を成し遂げる。聖人はその道に長くとどまって、天下は教化され整う。

彖伝・恒(訳)
彖伝が挙げる三つの久しさ日月は天に拠る長く照らす四季の移り変わり長く成し遂げる聖人はその道に天下が整う卦辞の最後の句行くところがあるよい終われば始まる一区切りの次が来る
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彖伝が挙げる三つの久しさ日月は天に拠る長く照らす四季の移り変わり長く成し遂げる聖人はその道に天下が整う卦辞の最後の句行くところがあるよい終われば始まる一区切りの次が来る
彖伝は日月・四季・聖人で久しさを説明し、「行くところがあるのによい」には「終わればまた始まる」を当てる。

四季は絶えず変わるのに、「長く成し遂げる」と言われます。一つの季節が終われば、次の季節が引き継ぐからです。彖伝が「行くところがあるのによい」を説明するのもこの意味で、終わりに着けば、また始まりがある。こう読むと、原文の久しさは続いていくことであって、その場にとどまることではありません。

彖伝の結びは方法の一言です。続いているものを見れば、天地万物のありさまが分かる。

大象:立って変えないのは方向

恒の大象は一文だけです。

雷と風、これが恒。君子はこれにならい、立って方向を変えない。

象伝・恒(訳)

「立つ」はしっかり立つこと。「変える」の字は『周易』の「易」と同じ字で、「方向」と訳した字は、場所ややり方も指せます。雷も風も止まらない動きなのに、君子には「立つ」ことが求められる。変えてはならないのは、動きでも静止でもなく、方向です。

雷と風を上下入れ替えると風雷益になり、これは恒の錯卦です。益の大象は逆の側に落ちます。善いものを見たらそちらへ移り、過ちがあれば改める。

恒:雷が上、風が下立つ方向を変えない益:風が上、雷が下同じ二つを入れ替え大象は移ると改める
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恒:雷が上、風が下立つ方向を変えない益:風が上、雷が下同じ二つを入れ替え大象は移ると改める
恒と益は同じ雷と風の組で、上下を入れ替えると行いも入れ替わる。恒は方向を変えず、益は善いほうへ移る。

並べて読むと、それぞれ向かう先が違います。益の移る・改めるは具体的な善や過ちに向き、恒の変えないは方向に向いています。

六つの爻辞:恒の求め方がずれる話が多い

恒の六つの爻辞のうち、恒が働くさまを正面から書くのは、九二の「悔いが消える」と六五の「その徳を恒にする」だけです。残りの四つは、恒の求め方がずれた姿を書いています。

爻位爻辞小象初六深く掘って恒を求める始めから深さを求める九二悔いが消える中にいて長く保てる九三徳を恒にしない受け入れる場所がない九四狩りに獲物なし長く居る場所が違う六五徳を恒にする一つに従い通す上六揺さぶって恒を求める大いに功がない
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爻位爻辞小象初六深く掘って恒を求める始めから深さを求める九二悔いが消える中にいて長く保てる九三徳を恒にしない受け入れる場所がない九四狩りに獲物なし長く居る場所が違う六五徳を恒にする一つに従い通す上六揺さぶって恒を求める大いに功がない
恒の六つの爻辞と小象:九二と六五は続くさま、初六・九三・九四・上六は恒の求め方のずれ。

初六は一番下です。「浚」は掘り下げること、「深く掘って恒を求める」は、始めから恒を深く掘ろうとすることです。小象は凶の理由を「始めから深さを求めるから」と説明します。九二は「悔いが消える」の短い一句で、小象は理由を「中にいて長く保てるから」とします。下卦の中ほどに立つので、続けられるのです。

九三は「徳を恒にしない」、小象は「受け入れてくれる場所がない」と評します。九四の「狩りをしても獲物がいない」には、小象が「長く居る場所が、自分の場所ではない」という理由を与えます。九四は陽の爻で、第四位、つまり陰の位に座っているので、この評と合っています。

六五の「その徳を恒にする」は、恒を正面から書いた句ですが、続いて立場で吉凶を分けます。女性には吉、男性には凶。小象は、女性は一つに従って最後までいくから吉、男性は物事の道理を自分で決める立場なので、ただ従うなら凶、と説明します。同じ「一つに従う」でも、立場が違えば評価が変わります。

上六の「揺さぶって恒を求める」は、爻辞では「震」の字を使い、「振」とする本もあります。小象は「振」です。振は揺り動かすこと。この爻はちょうど上卦の震の頂に座っています。小象の評は「大いに功がない」です。

咸・益・夬:恒の隣の卦と序卦での位置

恒を上下逆さにすると咸になります。だから恒の綜卦は咸で(上の図)、二つの卦は対をなします。序卦伝は、夫婦の道は久しくなくてはならないので、次は恒だ、と述べます。雑卦伝はこの一対に一字ずつ与え、咸は速く、恒は久しい、と言います。

錯卦は先に触れた益です。互卦は夬です。恒の第二から第四の爻は陽が三本(乾)、第三から第五の爻は陽・陽・陰(兌)で、下が乾、上が兌に重なります。

錯卦:益123456互卦:夬123456
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錯卦:益123456互卦:夬123456
恒の錯卦の益と互卦の夬を並べる:益は風と雷の入れ替え、夬は恒の中の四本の爻(二〜五爻)から重ねたもの。

序卦伝は恒の次に遁を置き、理由は、物は同じ場所にずっと居られないからで、遁とは退くことです。「久しい」から「退く」への移りが、そのまま次の一篇の出発点です。遁

読んだあとの疑問

恒卦は、何も変えるなという教えですか。

原文の「久しい」は、一区切りが次へ続いていくことです。四季は絶えず変わるのに「長く成し遂げる」と言われ、卦辞も行くところがあるのはよいと明言します。動かさないのは、大象の言う「方向」だけです。

恒卦と咸卦はどういう関係ですか。

互いに綜卦です。恒の六本の爻を上下逆にすると咸になります。六十四卦の順では咸が先で、恒がすぐ後に続きます。

「女性は吉、男性は凶」は、男女の運命を断じているのですか。

六五という一つの爻辞です。小象は、女性は一つに従って最後までいくから吉、男性は物事の道理を決める立場なのにただ従えば凶、と説明します。古い文章の中の立場に対する評語で、その時代の文脈で読むものです。今日の誰かへの断定ではありません。

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資料・出典

  1. 周易·恆(Wikisource 中文版:卦辞、爻辞、彖、象) ↗
  2. 说卦传(Wikisource 中文版):震动、巽入;雷风不相悖 ↗
  3. 序卦传(Wikisource 中文版) ↗
  4. 杂卦传(Wikisource 中文版) ↗

続けて読む

咸卦:山の上の沢、足の親指から舌まで、感じが身体を昇っていく ↗

遯卦:天の下に山、「遯の尾」から「ゆたかな退き」まで ↗

六十四卦:上下の卦の組み合わせと、卦名の調べ方 ↗

卦辞と爻辞:全体の言葉か、一本の線の言葉か ↗