謙卦:地の中に山、満ちると謙り
コンテンツ版 · · 資料・出典
謙は第十五卦で、山が地の中にあり、第三位だけが陽爻です。彖伝は天・地・鬼神・人の四つの主語で同じ型を言い、大象は「多いところから取る」で終わり、爻辞には「名の聞こえる謙り」が二度出てきます。
要点を先に約6分で読めます
謙は「満ちる」と対をなす言葉で、彖伝は天・地・鬼神・人の四つの主語でこの対を言い切り、六つの爻辞はそれぞれ違う位置に立ちます。
- 謙は坤(地)の下に艮(山)が重なり、山が地の中に隠れる。唯一の陽爻は九三で、爻辞で「労」を言うのも、小象で「万民」を言うのもこの爻だけ。
- 彖伝はまず天の道を下へ、地の道を上へ動かし、続けて同じ型の四文を、天・地・鬼神・人の主語で繰り返す。
- 大象の行いは「多いところから取って少ないところに足し、物を量って平らに施す」。「名の聞こえる謙り」は六二と上六に一度ずつ出て、小象の評が違う。

先に読む
地の中に山:高いものが低いところに置かれる
謙は第十五卦で、下卦が艮(山)、上卦が坤(地)、象は「地の中に山がある」です。六爻の中の陽爻は第三位に一本、ほかは陰爻が五本です。読みは qiān(第一声)で、第一卦の乾(qián、第二声)とは別の字です。
謙と錯卦の履:謙の唯一の陽爻と履の唯一の陰爻は、どちらも第三位にある。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
手元に置く三つの語
- 艮と坤
- 説卦伝は艮を「止まる」、坤を「従う」と言い、坤の象を並べる中に「均しい」も挙げている。均しいとは平らなこと。
- 盈(満ちる)
- 彖伝は「盈」と「謙」を必ず対にして言う。満ちたものと謙るものは、一組の反対語である。
- 九三
- 全卦で唯一の陽爻。爻辞で「労」を言うのはこの爻だけで、小象で「万民」を言うのもこの爻だけ。
山はもともと高いものですが、ここでは地の中にあり、高いものが低いものの下に置かれています。卦の形も同じで、陽の九三を陰爻が囲み、下に初六・六二、上に六四・六五・上六が並びます。
彖伝は四度言う:天・地・鬼神・人
彖伝はまず「謙は通る。天の道は下へ降って光り輝き、地の道は低くて上へ昇る」と言います。天の道は下へ、地の道は上へ、どちらも真ん中へ向かう。続いて、同じ型の四文が、主語だけを替えて並びます。
天の道は満ちたものを欠けさせて謙るものに加え、地の道は満ちたものを崩して謙るものへ流し、鬼神は満ちたものを害して謙るものに福を与え、人の道は満ちたものを憎んで謙るものを好む。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
前の二文は増減と流れを言い、後の二文は好みと禍福を言います。満ちたものを欠かせ、謙るものに加える。満ちたものを崩し、謙るものへ流す。満ちたものを害し、謙るものに福を与える。満ちたものを憎み、謙るものを好む。自然の動きから人の心まで一続きです。結びは「謙は、尊ければ光り輝き、低くても越えられない。これが君子の最後(結末)である」。卦辞の後半「君子は最後までやり遂げる」を受けています。
大象:多いところから取り、少ないところに足す
謙の卦辞は「通る。君子は最後までやり遂げる」。大象は、君子の行いを二つ挙げます。
地の中に山がある。これが謙。君子はこれにならい、多いところから取って少ないところに加え、物を量って平らに施す。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
「裒」は集める、取り出す、「称」は量ること。象と行いは同じ向きを指しています。山は高いのに地の中にあり、高いものが下へ向かう。君子は、多いところから取り、少ないところへ足して、両端を近づける。説卦伝の坤の象に「均しい」があり、「平らに施す」の「平」と同じところに落ち着きます。
六つの爻辞:同じ「名の聞こえる謙り」でも、位置で評が違う
六つの爻辞はどれも「謙」に関わり、各爻辞には小象の評が添えられています。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
一番下の初六は「謙りに謙る君子。それによって大河も渡る。吉」。「謙」が二度重なります。小象は「低さによって自分を養う」と言い、「牧」は羊を養うこと、低いところで自分の面倒を見る、という意味です。九三は唯一の陽爻で、「労して謙る君子。終わりを全うして吉」。卦辞の「最後までやり遂げる」がもう一度現れ、小象は「万民が服する」と書きます。六四は「すべてが有利である。謙りを広く振るう」。「広く振るう」にあたる字は読み方が一つではなく、小象は「法則に背かない」とだけ言います。
六五は「富まず、隣とともに。攻め伐つのによい。何事も有利である」。小象は相手を「従わない者」だと説明します。上六は「名の聞こえる謙り。軍を用いて、町や国を征伐するのによい」。小象はまず「志がまだ遂げられていない」と言い、続けて「軍を用いて町や国を征伐してよい」と足します。謙は頭を下げて終わる卦ではなく、上の二爻は出兵を語っています。
履・豫・解:謙の隣の卦、そして大有の後に置かれる理由
謙を上下逆にすると豫になり、唯一の陽爻は第三位から第四位へ上がります。この上下反転の関係は綜卦と呼ばれます。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
謙の錯卦は履で、この記事の最初の図の右側です。六本すべての陰陽を反対にしたもので、陰五本が陽に、陽一本が陰に変わりますが、位置は第三位のままです。互卦は解です。中の四爻を組み直し、二・三・四爻を下卦、三・四・五爻を上卦とすると、下が坎、上が震になります。
序卦伝が謙を大有の後ろに置く理由は、次の一文です。
大きなものを持つ者は満ちてはならない。だから謙が続く。
多くを持てば満ちてはならず、次の卦は謙りです。序卦伝はさらに先で、多くを持ちながら謙る者は喜び楽しむ、と述べて豫を続けます。
読んだあとの疑問
謙卦の「謙」は、乾卦の「乾」と同じ字ですか。
いいえ。声調を除くと拼音はどちらも qian ですが、謙は第一声、乾は第二声で、字も卦の形も別です。謙は陰五つに陽一つ、乾は陽が六本です。
謙卦は、いつも譲れと教える卦ですか。
本文はそう言っていません。六五と上六は出兵を語り、小象は相手を「服さない者」としています。彖伝も「謙は尊ければ光り輝く」と言い、弱さの言葉ではありません。
「名の聞こえる謙り」とはどういう意味ですか。
原文の「鳴」は音を立てる、名を知らしめること。この句は謙遜の評判が広まる意味に読むのが普通です。六二と上六に一度ずつ出てきて、小象は「心の内に得る」と「志がまだ遂げられない」で、位置を見ずに字面だけでは読めません。
この記事は役に立ちましたか?


