困卦:六つの爻、六つの物に困じる
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困は六十四卦の第四十七卦で、上が兌、下が坎、水が沢の下に沈んだ形です。彖伝の「剛が覆われる」と「言っても信じられない」、大象の「命を懸けて志を遂げる」、六つの爻辞で「困じる」の先にある切り株・酒食・石・金の車・赤い蔽膝・葛から読みます。
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困の六つの爻辞は、どれも「困じる」と言い、その先にくる物が違います。切り株・石・葛は粗いもの、酒食・金の車・赤い蔽膝は体面のある物です。
- 困は兌(沢)の下に坎(水)を重ねた卦で、水が沢の下に沈むので、大象は「沢に水がない」と言う。彖伝はまず形から名を説明する。剛が覆われる。三本の陽爻がすべて陰爻に覆われている。
- 六つの爻辞はどれも「困じる」に一つの物が続く。切り株、酒食、石、金の車、赤い蔽膝、葛。酒食・金の車・赤い蔽膝は三本の陽爻にあたり、貧しさの物ではない。
- 彖伝は「口を重んじれば行き詰まる」で結び、上卦の兌は説卦伝で「口舌」。大象は志を遂げることを言い、小象は九四で「志は下にある」、九五で「志はまだ得られない」と言う。

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水のない沢:上が兌、下が坎
困は、上が兌(沢)、下が坎(水)の卦です。沢には水があるはずなのに、水は沢の下にあります。これが大象の言う「沢に水がない」です。説卦伝は兌に「喜び」、坎に「落とし穴」の一字を与え、さらに兌は「口舌」だと言います。上は物を言い、喜ぶ口、下は穴です。爻を下から見ると、陰・陽・陰・陽・陽・陰。両端は陰爻で、三本の陽爻は、陰爻の間に挟まれるか、陰爻の下に押さえられています。
困と綜卦の井:綜卦は全体を上下逆にしたもので、困で沢の下に沈んでいた水は、井では木の上に持ち上がります。
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困を読む前の三つの語
- 困
- 彖伝が直接に説明していて、剛が覆われること。序卦伝は升のあとに置き、升って止まなければ必ず困になる、と言う。
- 剛が覆われる
- 剛は陽爻、覆うは上から隠すこと。九二は初六と六三の間に挟まれ、九四と九五は並んで上六の下にある。
- 困じる
- 六つの爻辞すべてがこの形で書かれる(初六は「尻を切り株に困じる」)。その先に来る物は毎回違う。
卦辞と彖伝:まず名を説明し、次に「言っても信じられない」へ
困の卦辞は短い四句です。亨る。正しくあれば大人は吉。咎なし。言うことあれど信じられない。彖伝は二つの端から説明します。
困とは、剛が覆われること。危うさのなかで喜ぶ。困じても居場所を失わず、それで通る。それができるのは、君子だけではないか。「正しくあれば大人は吉」とは、剛が中にあるから。「言うことあれど信じられない」とは、口を重んじれば行き詰まるということ。
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彖伝はまず、形から名を説明します。三本の陽爻がすべて陰爻に覆われている。次に卦の性質を言います。「危うさのなかで喜ぶ」。下卦の坎が危うさ、上卦の兌が喜びで、危うさの中でも喜べるので、「困じても居場所を失わず、通る」。「それができるのは、君子だけではないか」は反語で、できるのはおそらく君子だけ、という意味です。「正しくあれば大人は吉」は、「剛が中にある」から。九二と九五が中の位にあることを指します。
最後の一句はこうです。「言うことあれど信じられない、口を重んじれば行き詰まる」。話に頼れば、道が尽きる。上卦の兌は説卦伝で「口舌」とされ、二つが合います。卦辞で唯一の留保の言葉が向かうのは、「口」です。
大象:沢に水がない、命を懸けて志を遂げる
困の大象は「沢に水がない。それが困。君子はこれにならい、命を懸けて志を遂げる」です。
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「命を懸ける」は、伝統的には「命を惜しまない」と読まれ、「遂げる」は成し遂げることです。文の向きは、境遇に押さえられても、志は果たすということ。小象にも志に触れる評が二つあります。九五の「志はまだ得られない」は、志が果たされていないこと。九四の「志は下にある」は、伝統的には、下で応じる初六へ心が向かうと読まれます。大象は志を遂げよと言い、九五の小象は志がまだ得られないと言う。この食い違いは、頭に置いて読む価値があります。
六つの爻:どの爻も何かに「困じる」
六つの爻辞のなかに、「困じる」は六回出ます。その先に来る物は、毎回違います。
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六つの物を分けてみると、規則が見えます。陰爻の初六・六三・上六は、切り株、石、葛に困じていて、どれも粗いもの。陽爻の九二・九四・九五は、酒食、金の車、赤い蔽膝に困じていて、体面のある物。蔽膝は役人の装いの一部です。彖伝は「剛が覆われる」と言いますが、覆われているのは、まさにこの三本の陽爻です。
初六は「尻が切り株に困じ、暗い谷に入り、三年のあいだ姿が見えない」。切り株に腰かけて動けず、深い谷に入り、三年、人に会えない。小象は「暗くて明るくない」。
九二は「酒食に困じる。赤い蔽膝がちょうど来る。祭りに用いてよい。出て行けば凶、咎なし」。酒食に困じ、赤い蔽膝が来ようとしていて、祭りには向くが、出て行くのは凶。小象はそれでも「中に慶びがある」と言います。
六三は「石に困じ、いばらに寄りかかる。わが家に入っても妻に会えない。凶」。小象は前半を説明して「剛に乗っている」。六三は陰爻で、陽爻の九二の真上にあります。
九四は「ゆっくりと来て、金の車に困じる。惜しいが、終わりがある」。小象は「志は下にある」、そして「位は当たらないが、仲間がある」。
九五は「鼻と足を切られ、赤い蔽膝に困じる。やがてゆっくりと喜びがあり、祭りに用いてよい」。切るのは刑罰です。小象は「志はまだ得られない」、続いて「中を得て直いからである」。
上六は「葛に困じ、ぐらつく所にいて、『動けば悔いる』と言う。悔いがあるのだから、行けば吉」。小象は「まだ当たらない」「行けば吉」。
九四と九五には、どちらも「ゆっくり」の字があります。九四は来るのがゆっくり、九五は喜びが来るのがゆっくりです。
井・賁・家人:隣の卦と序卦
困の綜卦は井です。困を上下逆にすると、坎は逆さにしても坎のまま上へ昇り、兌は逆さになって巽となり下へ降りて、下が巽、上が坎の形になります。錯卦は賁で、困と六本すべてが陰陽反対の関係にあります。互卦は家人です。困の中ほどの四本には、離(火)と巽(風)の二つの三爻の卦が隠れていて、離の上に巽が乗る形が家人です。
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序卦伝の並びは、升、困、井。升り続けた先が困で、上で行き詰まったものは下へ戻る、という筋道です。困の大象は「沢に水がない」で、水は下に沈みます。井の大象は水が木の上にあります。同じ水でも、一方は沢の下に落ち、もう一方は上へ引き上げられます。
読んだあとの疑問
困卦は、貧しさや不運のことですか。
原文はそれだけではありません。卦辞はまず「亨」と言い、「大人は正しくて吉、咎なし」と続きます。六つの爻辞でも、酒食・金の車・赤い蔽膝のような体面のある物が、同じ「困じる」で書かれています。足りないことより、何かに押さえられていることを言う卦と読めます。
困と坤は読みが近いのですが、どう見分けますか。
困は第四十七卦で、上が兌、下が坎、陰爻と陽爻が混じります。坤は第二卦で、六本とも陰爻。ローマ字では同じ Kun になることがあるので、原字で見分けます。困は、囲いの中に木が入った字です。
「言うことあれど信じられず」は、黙っていろということですか。
彖伝の説明は「口を重んじれば行き詰まる」。言葉に頼ると、手立てが尽きる、ということです。困の卦のなかで、言うことが信じられない状況として置かれています。説卦伝は上卦の兌に「口舌」の象を与えていて、二つが合っています。
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