坤卦:霜から龍の戦いまで
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坤は六十四卦の二番目で、六本の陰爻、上卦も下卦も坤です。卦辞の牝馬と方角、大象「徳を厚くして万物を載せる」、霜から龍の戦いへ進む六つの爻辞と、『文言伝』の補いを読みます。
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坤卦の線は、切れた陰爻が六本だけです。原文は「載せる」と「含む」をくり返し、足もとの霜から、野原での龍の戦いまでを書きます。
- 坤は坤(地)の上に坤(地)を重ね、六爻はすべて陰。『説卦伝』は「坤は順(従う)」と言い、大象は「徳を厚くして万物を載せる」で終わる。
- 卦辞の動物は牝馬で、『彖伝』は「地の類」とする。方角は「西南で朋を得、東北で朋を喪う」、結びは安らかに貞しければ吉。
- 六つの爻辞は霜を踏む・直く方く大きい・美を含む・袋を縛る・黄の裳・龍の戦い。用六は「長く貞しいのがよい」で終わり、『文言伝』が六つすべてに補いを加える。

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切れた六本の線、地の上の地
坤は二番目の卦で、切れた陰爻が六本、下から初六・六二・六三・六四・六五・上六と呼びます。上卦も下卦も坤なので「坤上坤下」、地の上に地を重ねた形です。『説卦伝』は坤に「順」の一字を与え、さらに取象を長く並べ、そのなかに地・母・布・釜・均・子を連れた牛・大きな車・文・衆・柄があります。「地においては黒」とも添えています。
坤と錯卦の乾:錯卦は六本すべての陰陽を入れ替えたものです。
この長い取象のうち、いくつかは卦自身の言葉と響き合っています。
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前の三つは呼応です。「順」は『彖伝』の「従順に天を受け継ぐ」に、人や物を運ぶ大きな車は『彖伝』の「大地は厚く、物を載せる」に、文(あや)は六五の小象の「文(あや)は内にある」に重なります。最後の一行は合いません。『説卦伝』は牛を坤に当てるのに、卦辞が書くのは牝馬です。次の節はここから読みます。
卦辞:牝馬、先に迷う、西南と東北
坤の卦辞は三つの文からなり、乾よりずっと長くなっています。一文ずつ見ていきます。
坤の卦辞、三つの文
牝馬の貞しさ
「はじまりから大いに通じる。牝馬のように貞しく守るのがよい。」出だしは乾と同じで、そのあと牝馬に移ります。
迷い、そして主を得る
「君子に行くところがあれば、はじめは道に迷い、のちに主を得る。」
朋を得、朋を失う
「西南では仲間を得、東北では仲間を失うのがよい。」結びは「安らかに貞しければ吉」。
「牝馬」は雌の馬です。『彖伝』は「牝馬は地の仲間で、地の上をどこまでも行き、柔らかく従って貞しくあるのがよい」と説明します。『説卦伝』は馬を乾に当てますが、ここでは『彖伝』が牝馬を地の類に入れ、地に沿って行く馬になっています。
二つ目の「はじめは迷い、のちに主を得る」を、『彖伝』は「はじめは迷って道を失い、のちには従って常の道を得る」と言い換えます。三つ目は一つの得と一つの失で、『彖伝』が一つずつ評を付けています。並べると分かりやすくなります。
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朋を得ることは「同類とともに行く」と読まれ、朋を失うことは「最後には喜びがある」と読まれます。得と失が、そのまま良し悪しに対応しているわけではありません。全体の結びは「安らかに貞しい吉は、果てのない地に応じる」です。
「載せる」と「含む」:坤の二つの動詞
坤の『彖伝』と大象を読むと、二つの動詞が何度も現れます。一つは載せる。『彖伝』は「大地は厚く、物を載せる」、大象は「君子は徳を厚くして万物を載せる」と言い、『説卦伝』には大きな車があります。もう一つは含む。『彖伝』は「含み、広く、光り大きい」、六三は「美を含む」、『文言伝』は「万物を含んで光に変える」と言います。
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大象の文は型どおりで、はじめに自然の象、つぎに君子(卦によっては先王や后)のふるまいが来ます(型のいわれは十翼の読み方にあります)。坤の象は「地の勢いは従順である」、ふるまいは「徳を厚くして万物を載せる」。『彖伝』の「大地は厚く、物を載せる」は地のことで、大象は同じ「厚い」と「載せる」を君子に手渡しているのです。
三つの「含む」は、いずれも内に収める向きで、対象が違います。『彖伝』では広大なものを含み、六三では一本の爻が自分の模様を含み、『文言伝』では万物を含んで光らせます。
霜から龍の戦いまで:六本の陰爻の収めと現れ
六つの爻辞が挙げるのは具体的なものです。霜、方形、模様、袋、裳、血。どの爻辞にも、あとから小象の一言が付きます。
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初六は一番低い位置です。足が霜を踏めば、堅い氷はもうすぐ。小象は「陰がようやく凝り始めた。この道に従っていけば堅い氷に至る」と言います。小さく始まったものが一段ずつ大きくなる様子です。
六二の「直く、方く、大きい」は三つとも形容で、そのあとに「習わなくても利にならないことはない」と続きます。小象は「直くて方い」「地の道が光る」と評します。
六三は「美を含んでいる。貞しく守れる」。続いて「王の仕事に従うことがあっても、成果は自分のものにせず、終わりはある」。小象は「時が来て発する」です。
六四の「括囊」は袋の口をきつく縛ること。「咎めもなく、誉れもない」。小象は「慎めば害は及ばない」と評します。
六五は「黄色い裳、大いに吉」。裳は下半身の衣で、位置は低く、色は黄です。小象は、この吉を「文(あや)が内にある」ことに結びつけます。
正面からの衝突が出てくるのは、最後の上六だけです。「龍が野原で戦い、その血は黒と黄色」。小象は「その道は窮まった」と評します。それまでには、霜を踏む用心、美を含み袋を縛る収め、黄の裳の内なる美があり、戦いは最後に置かれています。
『文言伝』の補い、用六、そして乾
坤の『文言伝』は、六つの爻辞のそれぞれに一段を補っています。その要になる一句を取り出すと、前の節の六行にちょうど向き合います。
『文言伝』が六つの爻辞に加える言葉
少しずつ
「一朝一夕のことではなく、その由来は少しずつ進んだ」。
敬と義
「君子は敬の心で内面をまっすぐにし、義によって外に対して折り目正しくする」。
成さずに終える
「地の道は自分では成し遂げず、代わりに終わりまで果たす」。
慎み
「天地が閉じれば賢人は隠れる」。袋を縛るとは慎みのこと。
黄の中に理
「美は中にあり、四肢にまで通る」。
黒と黄
「黒と黄は天地の色が入り混じったもの。天は黒く、地は黄色い」。
六三の段で『文言伝』は「地の道」「妻の道」「臣の道」を並べますが、これは昔の役割の序列を譬えに使ったものです。今日読むなら、「成すことなく、代わって終わりを遂げる」という構造のほうが目を引きます。手柄を主張せず、仕事は最後までやり通す、ということです。上六の段は、なぜ「龍」と書くのかを説明します。陰が盛んになり、自分に陽がないのではと疑うところまで来ると戦うことになるので龍と呼び、まだ陰の類から離れていないので血と呼ぶ、と。
坤の最後には一文が加わります。用六は「長く貞しいのがよい」。小象は「用六の永貞は、大いなる終わりをもつ」と言います。乾の用九は「龍の群れに首がいないのを見る、吉」でした。坤の用六は短い言葉で、長く貞しく在ることに落ち着きます。
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坤はひっくり返しても坤のままなので、綜卦は自分自身、互卦もやはり坤です。違うのは錯卦だけで、陰と陽をすべて入れ替えると乾が現れます。『序卦伝』には坤を単独で導く一句がなく、乾坤のあとの最初の文は「天地のあいだに満ちるものは万物だけ」。次の卦はここから始まります。
読んだあとの疑問
坤卦は、柔らかく従順であれという意味ですか。
原文の「順」は、従順に天を受け継ぐという意味です。『彖伝』は同じところで「厚く物を載せる」「含み、広く、光り大きい」とも言います。爻辞には袋を縛る慎みもあれば野原で龍が戦う衝突もあり、ひたすら譲れと言う爻はありません。
「坤は牛」なのに、卦辞が牝馬なのはなぜですか。
『説卦伝』は馬を乾に、牛を坤に当てますが、坤の卦辞は牝馬と書きます。『彖伝』はこれを「牝馬は地の類で、地の上をどこまでも行く」と説明します。二つの記述がそれぞれ原典にあるので、並べて読むのが穏当です。
「西南で朋を得、東北で朋を喪う」は友人の話ですか。
字面は朋を得る、喪うです。『彖伝』は「仲間とともに行く」「最後には喜びがある」と読み、「安らかに貞しい吉」で結びます。朋が誰かは原文に書かれていないので、字面と『彖伝』の言葉の範囲で読みます。
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