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YJ-001 / 易経

易経と周易:名称と範囲

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五つの名前、それぞれの範囲

一枚の対照表で、易・周易・易経・易伝・易学がそれぞれどこまでを指すかを分け、『周礼』『左伝』『漢書』芸文志・『隋書』経籍志で名前の出どころを確かめて、伝統的な説明と確かめた材料を分けます。

要点を先に約9分で読めます

易・周易・易経・易伝・易学は混用されがちですが、本全体を指すもの、卦の図と卦辞・爻辞だけを指すもの、解釈を指すもの、後世の研究を指すものに分かれます。

  • 「周易」には狭い意味と広い意味があります。狭くは卦の図と卦辞・爻辞、広くはそれを解説する伝まで含みます。
  • 『周礼』は周易を三つの易法の最後に置き、『左伝』では占筮に持ち込まれる書であり引用される書でもあります。『漢書』芸文志には「易経十二篇」の項目があります。
  • 誰がどの層を作ったかについて古書の記述は一致しません。伝統的な説明として紹介するにとどめ、作者や年代の確定事項としては書けません。
18秒で確認:名称ごとの範囲、三つの出典、名前に出会ったときの三つの問い。

五つの名前、それぞれの範囲

『周易』を読もうとする人が最初に出会うのは、易・周易・易経・易伝・易学という一続きの名前です。同じものの別名として扱われがちですが、本全体を指すもの、その一部だけを指すもの、解釈を指すもの、後世の研究を指すものに分かれます。

対照表:周易(狭義)、周易(広義)、易伝、易学の四つの名称が、卦の図、卦辞・爻辞、伝、後世の注をそれぞれ含むかどうか。元の図を開いて拡大する

名称と範囲の図:「含む」はその名称にふつう含まれる層を示します。狭義と広義は箇所ごとに決まり、単一の基準はありません。

まず四つの層を押さえます。

  • 卦の図:陰と陽の線を重ねた六十四の図形です。線の引き方は陰爻と陽爻で扱っています。
  • 卦辞・爻辞:卦全体と各爻に付けられた文です。二つの分担は卦辞と爻辞にまとめてあります。
  • 伝:図形と文を解説する篇です。
  • 後世の注:のちの学者が書物全体に付けた注と疏です。

次に表の四つの列を読みます。狭い意味の周易は最初の二層だけ、広い意味の周易は伝までを含みます。易伝は伝だけを指し、易学は後世の研究で、その成果が四層目に当たります。

同じ頁に二つの範囲が見えます。泰の卦は、ウィキソース(中国語版)の頁で、見出しの「易経」が受け持つのは卦辞と爻辞だけですが、頁全体は『周易』泰という題で、彖伝・象伝の部分まで一緒に収めています。こちらは広義です。

『周礼』と『左伝』:「周易」と書かれた二か所

二つの古典に「周易」の名が出てきます。定義を先に置くより、使われ方を見るほうが確かです。

『周礼』春官官職の条文「三易」の一つ連山・帰蔵と並ぶ八と六十四『左伝』叙述の中の用法陳侯のもとへ持参占筮で結果を得る書として引用同じ名前、二つの場面
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『周礼』春官官職の条文「三易」の一つ連山・帰蔵と並ぶ八と六十四『左伝』叙述の中の用法陳侯のもとへ持参占筮で結果を得る書として引用同じ名前、二つの場面
『周礼』は周易を連山・帰蔵と並ぶ三易の一つとし、八と六十四にも触れる。『左伝』では周易が陳侯のもとへ持ち込まれて占筮に使われ、書として引用もされる。

『周礼』春官では、大卜が「三易」をつかさどります。周易は連山・帰蔵と並んで挙げられています。

大卜は、……三易の法をつかさどる。第一を連山、第二を帰蔵、第三を周易という。その経卦はいずれも八、その別はいずれも六十四である。

『周礼』春官宗伯・大卜(本文はウィキソース(中国語版)の原文から訳出。「三兆の法」の一節は中略)

この一文は、周易を三つの易法の三番目に置いています。続く「八」と「六十四」は、ふつう八卦と六十四卦と理解されます。「いずれも」という語は、字面どおりなら三つをまとめて言っています。原文は三つの名を並べるだけで、それぞれの意味を述べていません。同じ春官の筮人の条にも「三易」をつかさどるとあり、同じ三つが同じ順に挙げられています。

『左伝』では、「周易」が叙述の中に出てきます。

『左伝』の二か所

荘公二十二年

周の史官が『周易』を持って陳侯に会った

陳侯はそれで筮をさせ、「観の否」を得ました。観の卦が否に変わるという意味です。ここの『周易』は、持ち込まれ、占筮に使われるものです。

襄公九年

穆姜:「『周易』に『随は、元いに亨る、貞しきに利ろし』とある」

ここの『周易』は、文を引ける書です。引かれた語は、ウィキソース(中国語版)の『周易』随の卦辞の初めの四語と用字が一致します。

二か所を合わせると、『周易』は占筮に使うものであり、引用できる書でもあります。どちらも、そのとき書物にどの層が含まれていたかを述べていないので、狭義か広義かは決まりません。

『漢書』と『隋書』:目録と伝統的な説明

漢代の図書目録では、「易経」はすでに一つの書名です。『漢書』芸文志の六芸略、「易」の部は、次のように始まります。

易経十二篇。施・孟・梁丘の三家。易伝は周氏二篇、服氏二篇、楊氏二篇、蔡公二篇、韓氏二篇、王氏二篇、丁氏八篇。

『漢書』芸文志・六芸略「易」(本文はウィキソース(中国語版)『漢書』巻三十から訳出)

ここの「易経」は、目録の書名です。続く「易伝」は、周氏・服氏・楊氏などの家ごとに、何篇かが数えられています。同じ志は、この部の小序で、これらの書の由来も述べています。

文王は諸侯の身で天命に従って道を行い、……そこで易の六爻を重ね、上下篇を作った。孔氏はこれに彖・象・繋辞・文言・序卦の類、十篇を作った。

『漢書』芸文志「易」の小序(同じ原文から訳出。省略部分は一句)
「十二篇」の算術上下篇2篇足す彖・象・繋辞など10篇合計易経十二篇二つの文の足し算で、原文は明記していない
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「十二篇」の算術上下篇2篇足す彖・象・繋辞など10篇合計易経十二篇二つの文の足し算で、原文は明記していない
上下篇の二篇に、彖・象・繋辞などの十篇を足すと、易経十二篇になる。これは二つの文を足したもので、原文は明記していない。

上下篇の二篇に十篇を足すと、「易経十二篇」の数と合います。これは二つの文を足した結果で、原文がそう書いているわけではありません。

『隋書』経籍志の「易」の小序は、名前の由来まで述べています。

三代に及んで、実に三つの易となった。夏は連山、殷は帰蔵、周の文王が卦辞を作ったものを周易という。周公がさらに爻辞を作り、孔子が彖・象・繋辞・文言・序卦・説卦・雑卦を作った……

『隋書』経籍志一「易」の小序(本文はウィキソース(中国語版)から訳出)

『隋書』は「周易」の名を文王の作った卦辞と結びつけ、爻辞を周公に帰しています。『漢書』の分け方とは違います。

「易」の字、「易伝」、「易学」:書・解釈・研究

名前のほかに、区別しておきたい語が三つあります。単独の「易」の字、「易伝」、「易学」です。

易学後世の注・疏・研究。例:『周易正義』易伝経文を解釈する篇:彖・象・繋辞・説卦……周易の経文卦の図と卦辞・爻辞下から順に、解釈される文、解釈、研究
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易学後世の注・疏・研究。例:『周易正義』易伝経文を解釈する篇:彖・象・繋辞・説卦……周易の経文卦の図と卦辞・爻辞下から順に、解釈される文、解釈、研究
三層の積み重ね:いちばん下が周易の経文で、卦の図と卦辞・爻辞。中が易伝で、経文を解釈する篇。いちばん上が易学で、後世の注・疏・研究。

経と伝を並べて読む方法は、経と伝にあります。ここでは三つの語の使われ方だけを見ます。

単独の「易」は、古い書物ではそのまま書名であることが多くあります。『荘子』天下篇は、六つの書を並べています。

詩は志を述べ、書は事を述べ、礼は行いを述べ、楽は和を述べ、易は陰陽を述べ、春秋は名分を述べる。

『荘子』天下(本文はウィキソース(中国語版)から訳出)

『繋辞下伝』は、同じ字で書物と、その書物の語る道の両方を呼んでいます。

易の書たるや、遠ざけてはならない。その道たるや、しばしば移る。

『繋辞下伝』第七章(章立てはウィキソース(中国語版)に従う。訳出)

一文の前半は書物のこと、後半はその書物の道のことを言っています。

易学の例は『周易正義』です。署名はウィキソース(中国語版)によれば、王弼・韓康伯が注を付け、孔穎達が疏を書いたとされています。目次は乾・坤から未済まで六十四卦が並び、そのあとに繋辞上下、説卦、序卦、雑卦が続きます。書名の「周易」はここでは広義で、書物そのものは後世の易学に属します。

三つの語の使われ方

易
単独では、『荘子』のように書物全体を指すことも、『繋辞下伝』のように書物の語る道を指すこともあります。前後で判断します。
易伝
一般には経文を解釈する篇で、彖伝・象伝・繋辞・説卦などです。漢代の目録の「易伝」は、各家が伝えた書の名です。
易学
後世の、この書物への注釈と研究です。成果は注・疏・専著です。

名前に出会ったら、まず三つ問う

ここまでの出典を並べると、一つの手順が得られます。「易」の字を含む文に出会ったら、まず位置づけを決め、それから理解します。

文\出どころ文出典何か①「三に曰く周易」周礼並ぶ名の一つ②「周易に曰く……」左伝随の卦辞を引く③「易経十二篇」漢書目録の書名④「易は象なり」繋辞下伝伝自身の言葉①〜③は他の書に出る名前、④は伝そのもの
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文\出どころ文出典何か①「三に曰く周易」周礼並ぶ名の一つ②「周易に曰く……」左伝随の卦辞を引く③「易経十二篇」漢書目録の書名④「易は象なり」繋辞下伝伝自身の言葉①〜③は他の書に出る名前、④は伝そのもの
四つの文の位置づけ:「三に曰く周易」は『周礼』の並ぶ名の一つ。「周易に曰く」は『左伝』で随の卦辞を引く。「易経十二篇」は『漢書』の目録の書名。「易は象なり」は『繋辞下伝』で、伝自身の言葉。

後ろの二列を隠して、一つずつ自分で判断してみてください。①は並べられた三つの名の一つで、範囲は示されていません。②は随の卦辞の初めの語を引いているので、卦辞・爻辞の層に当たります。③は目録にある書名です。④は『繋辞下伝』第三章で、伝が「易とは何か」を述べている箇所です。

  1. 出どころを問う

    その文は書名か、引用か、目録の項目か、解釈か。まず、どの書の言葉かをはっきりさせます。

  2. 範囲を問う

    本全体の話か、ある一層の文か、後世の研究か。同じ箇所の前後に何が並んでいるかを見ます。

  3. 用法を問う

    ここは狭義か広義か。書物が違えば同じ語でも使い方が違います。別の書の広義や狭義を、そのまま持ち込まないでください。

読んだあとの疑問

「易経」と「周易」は同じ本ですか。

たいていは同じ本の二つの呼び名ですが、範囲は文脈次第です。卦の図と卦辞・爻辞だけを指す場合もあれば、伝まで含む場合もあります。その箇所に戻り、前後に何が並んでいるかを見て判断します。

「易伝」は『周易』の一部ですか。

どの意味の「周易」かで変わります。狭い意味では伝を含まず、広い意味では含みます。たとえば『周易正義』のような注疏本では、目次に繋辞や説卦などの篇が六十四卦とともに並べられています。

『周易』は周の文王が作ったと言ってよいですか。

伝統的な説明の一つですが、書物によって分け方が違います。『漢書』芸文志と『隋書』経籍志では、文王・周公・孔子がそれぞれ何を作ったかの記述が一致しません。出典を添えて紹介し、定説として書かないでください。

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この記事を含む学習ルート

資料・出典

  1. 維基文庫・周禮・春官宗伯(大卜、筮人:「三易」) ↗
  2. 維基文庫・春秋左氏傳・莊公(二十二年傳);襄公(九年傳)見 春秋左氏傳/襄公 ↗
  3. 維基文庫・漢書・卷三十 藝文志(六藝略「易」:易經十二篇、易傳、小序) ↗
  4. 維基文庫・隋書・卷三十二 經籍一(「易」類小序) ↗

続けて読む

経と伝:乾の一頁で、本文と解釈を見分ける ↗

陰爻と陽爻:二種類の線を覚え、下から上へ六本を読む ↗

易経・梅花・六爻:共通の卦と異なる方法 ↗

卦辞と爻辞:全体の言葉か、一本の線の言葉か ↗