知識ライブラリー
YJ-011 / 易経

象数と義理

コンテンツ版 · · 資料・出典

『周易』の二つの読み方は交わる

『周易』の読み方には、象と数の構造を見る方向と、文辞の道理を見る方向があります。井の『象伝』の一文、孔穎達の二つの疏、王弼の「明象」で、二つが対立せず交わる様子を確かめます。

要点を先に約9分で読めます

『周易』の一文には二つの問いを立てられます。線と卦はどう並ぶか(象数)、文辞はどんな道理を述べるか(義理)。この二つの問いは、同じ一文に重なることが多いのです。

  • 象数は線・卦・取象・数の構造を見て、義理は文辞の意味と身の処し方を見ます。読み方の二つの方向で、二冊の本ではありません。
  • 「両派六宗」は清代の『四庫全書総目』の言葉で、後の人が歴代の注釈者を整理したもの。『周易』自身の文ではありません。
  • 孔穎達は井の疏で、まず上下の卦に分けて『説卦伝』の象を引き、次に民を養う道理を述べます。一人の注釈者が二つの問い方を使っています。
18秒で確認:二つの問い、井の一文の二つの層、そして読む前の三つの確認。

先に読む

十翼を読む:彖・象・繋辞は何を見るか ↗

同じ一文に、二つの問い

『周易』の一文には、二つの問いを立てられます。一つは構造への問いで、どの卦か、上下の卦は何か、陽爻と陰爻は何本ずつか、どんな象が使われているか。もう一つは道理への問いで、この文は何を述べるのか、なぜそう言うのか、身の処し方にどんな意味があるのか。

三列の対照図。左は構造を見る象数、中は両方が一つの文で出会う場所、右は道理を見る義理。井を例にする。元の図を開いて拡大する

読み方の図:井を例に、左右はそれぞれ別の問いを立て、真ん中は一つの文が両方を担う場所。

前者はふつう象数、後者は義理と呼ばれます。図の例は井です。左の列は構造、右の列は道理を問い、真ん中の列は二つが出会う場所です。『象伝』は「木の上に水がある、井。君子はこれによって民をねぎらい、助け合いを勧める」と述べます。前半が象、後半が行いで、一つの文に二つの層が入っています。

二つの方向が問うこと

象数

構造を問う

「象」は卦の形と取象で、井は巽が下、坎が上、木の上に水があります。「数」は数えられるもので、ここでは最も単純なものだけを取ります。井には陽爻が三本、陰爻が三本あり、爻の名に九と六が付きます。

義理

道理を問う

文辞の意味と道理、そこから導かれる身の処し方です。井は養って尽きず、君子は民をねぎらい助け合いを勧めます。

九と六が爻題になる仕組みは爻位:初と上、二と五にあります。象数と義理の二語は、清代の『四庫全書総目』に見えます。次の節はそこから始めます。

『四庫全書総目』は二つの道をどう述べるか

『四庫全書総目』は、清代に編まれた書物の目録です。その易類の序は、歴代の注釈者を順に並べ、「両派六宗」という言い方を使っています。後の人が、さらに前の人を整理したもので、『周易』自身の文ではありません。序の一節を引きます。

漢の儒者は象数を語った。まだ古から遠くなかったからである。一たび変じて京・焦となり、禨祥(吉凶の前兆)に入った。再び変じて陳・邵となり、造化(天地の生成変化)を窮めることに努めた。易はこうして民の用に切実でなくなった。王弼は象数をことごとく退け、老荘で説いた。一たび変じて胡瑗・程子となり、初めて儒の理を明らかにした。再び変じて李光・楊万里となり、さらに史事を引いて証した。易は日ごとにその議論の端を開いた。この両派六宗は、すでに互いに攻め合っている。

出典:ウィキソース(中国語版)『四庫全書総目提要』巻一、易類の序
一つの道:象数を語る漢の儒者象数を語る一変京・焦禨祥に入る再変陳・邵造化を窮めるもう一つの道:理を説く王弼老荘で説く一変胡瑗・程子儒の理を明かす再変李光・楊万里史事を引く「一変」「再変」は序の言葉そのまま。目録の述べる順序である
図を拡大 · 横にスクロールして読む
一つの道:象数を語る漢の儒者象数を語る一変京・焦禨祥に入る再変陳・邵造化を窮めるもう一つの道:理を説く王弼老荘で説く一変胡瑗・程子儒の理を明かす再変李光・楊万里史事を引く「一変」「再変」は序の言葉そのまま。目録の述べる順序である
序が述べる二つの道

この一節は六つの宗(流れ)を順に挙げ、そのうち四つの移り変わりに「一変」「再変」と添えています(図のとおり)。序はそのあと編者の方針を述べます。「いま諸家を参校し、象に因って教えを立てる者を宗とする」。この基準には、象も教えも入っています。目録は象数のやり方として、鄭玄の『易』注が多く語る互体と、清の恵棟が鄭注をもとに作った十二月爻辰図にも触れます(鄭玄注と恵棟の編み直しの提要)。推し方は省きます。

序には「六十四卦の大象はみな君子以の字がある」という要約もあります。原文で一つずつ確かめると、要約と原文は完全には一致しません。

確認:大象の書き出し

乾

「君子は以て」

「天の運行は健やかで、君子はそれにならって自ら励み、休むことがない。」

泰

「后は以て」

「天地が交わる、泰。后(君主)はこれによって天地の道を整え……」

比と復は「先王は以て」で始まり、後で見ます。分類も要約も便利な整理にすぎず、引用するときは原文に戻って確かめます。経部全体の総序は、経学全体を論じて次のように述べます。

門戸の見を溶かして、それぞれの長所を取れば、私心は去って公の理が現れ、公の理が現れれば経の意味は明らかになる。

出典:ウィキソース(中国語版)『四庫全書総目提要』経部総序(漢学と宋学を論じる箇所で、『易』だけを指すものではない)

この一文に従うかぎり、編者の態度は、長所を取ることであり、どちらかに立つことではありません。

井:一つの文にある二つの層

まず井で試します。井は下の卦が巽、上の卦が坎です。『象伝』が卦全体を述べる一文(通称は大象)は、次のとおりです。

木の上に水がある、井。君子はこれによって民をねぎらい、助け合いを勧める。

『周易』井、『象伝』(出典:ウィキソース(中国語版))
井 · 巽が下、坎が上123456坎巽
図を拡大 · 横にスクロールして読む
井 · 巽が下、坎が上123456坎巽
井:巽が下、坎が上

『象伝』は十翼の一つで、各部分が何を見るかは十翼を読むにあります。構造は一つずつ確かめられます。下は巽、上は坎、陽爻が三本、陰爻が三本。象の部分は『説卦伝』第十一章と照らします。そこには「巽は木」「坎は水」があり、水が上、木が下という位置も「木の上に水」と合います。取象の項目の由来は、八卦の三爻構造と象で扱います。

同じ卦の疏に、二つの読み方が両方あります。

孔穎達の井の疏:一人の注釈者、二つの読み方

『彖伝』の疏

上下二つの卦から名を説く

「この卦は坎が水で上にあり、巽が木で下にあり、また巽は入るの意で、木が水に入って、さらに水を汲み上げる。これが井の象である。」

『象伝』の疏

井の性質から、行いへ

「井の意味は、汲み養って尽きないことにある。君子はねぎらいの恵みをもって民の隠れた憂いを気遣い、助け合うよう勧め、事を成し遂げさせる。それが、養って尽きないということである。」

二つとも、唐の孔穎達が『周易正義』で井に付けた疏です。前の一節は井を上下二つの三画の卦に分け、『説卦伝』の三つの取象を使います。坎は水、巽は木(第十一章)、巽は入る(第七章)です。後の一節は、線がどう並ぶかにはもう触れず、この象が人に何を意味するかへ移ります。『彖伝』そのものも同じ書き方です。「巽、水に乎いて水を上ぐ、井。井は養って窮まらざるなり」。前の句は卦名の「巽」と象を表す語「水」を使い、後の句は井の性質を直接述べます。

王弼「明象」:言・象・意のつながり

三国魏の王弼は『周易略例』に「明象」を書きました。義理に傾いた文章で、言・象・意の三つの関係を論じています。

意伝えたい意味象意をかたちに表す言象を言葉で明らかにする読む順序は下から上へ:言を辿って象を観、象を辿って意を観る
図を拡大 · 横にスクロールして読む
意伝えたい意味象意をかたちに表す言象を言葉で明らかにする読む順序は下から上へ:言を辿って象を観、象を辿って意を観る
意・象・言の三層

象とは、意を出すものである。言とは、象を明らかにするものである。意を尽くすには象に及ぶものはなく、象を尽くすには言に及ぶものはない。言は象から生まれるので、言を辿って象を観ることができる。象は意から生まれるので、象を辿って意を観ることができる。……言とは、象を明らかにするものである。象を得たら言を忘れる。象とは、意をとどめるものである。意を得たら象を忘れる。たとえば蹄は兎のためにあり、兎を得たら蹄を忘れる。筌は魚のためにあり、魚を得たら筌を忘れるようなものである。

出典:ウィキソース(中国語版)王弼『周易略例』明象(間の一文を省略)

蹄と筌は兎と魚を捕る道具で、言と象のたとえです。目的に届いたら、道具を握りしめている必要はありません。この一連の句は「意を得て象を忘る」とまとめられることがよくあります。彼は、象が意に従うべきことにも触れています。

だから、類に触れてそれを象とし、義に合わせてそれを徴とすることができる。義が健にあるなら、どうして馬でなければならないのか。類が順にあるなら、どうして牛でなければならないのか。

出典:ウィキソース(中国語版)王弼『周易略例』明象

「乾は馬」「坤は牛」は『説卦伝』第八章の項目で、象は意に従うのだから、乾を馬に固定する必要はない、というのが彼の主旨です。

交わりながら読む:同じ一文を二度問う

ここまでを練習にします。『象伝』の一文を取り、まず構造を、次に道理を、最後にもう一つの方向が何を補うかを問います。さらに二つの卦で試します。

卦\項上下の卦象の一句「以て」の後比坤が下、坎が上地の上に水万国を建て諸侯と親しむ復震が下、坤が上雷、地の中にあり至日に関を閉ざす……二つとも「以て」の前が象、後が先王の行い。復は書き出しだけを引く
図を拡大 · 横にスクロールして読む
卦\項上下の卦象の一句「以て」の後比坤が下、坎が上地の上に水万国を建て諸侯と親しむ復震が下、坤が上雷、地の中にあり至日に関を閉ざす……二つとも「以て」の前が象、後が先王の行い。復は書き出しだけを引く
比と復:象が先、行いが後
  • 象数の確かめ:『説卦伝』第十一章に「坤は地」「坎は水」「震は雷」があり、「地の上に水」「雷、地の中にあり」の上下の位置と合います。
  • 義理の読み方:「以て」の後は、先王がそれを受けて何をしたかを述べます。復の「至日」は、『周易正義』所収の注が冬至と夏至と読んでいます。
  1. どの層の文か

    経文か、『彖伝』『象伝』か、後の注や疏か。まず層を示してから引きます。

  2. 構造か、道理か

    上下の卦・象・数を述べているのか、この卦の意味とすべきことを述べているのか。一つの文に両方あることもあります。

  3. 別の方向は何と言うか

    構造を確かめたら、それがどんな説を支えるかを問います。道理を読んだら、構造に根拠があるかを振り返ります。

読んだあとの疑問

象数と義理は別々の学派で、どちらかを選ぶべきですか。

選ぶ必要はありません。『総目』は歴代の説を「両派六宗」と述べますが、経学全体を論じるところでは、それぞれの長所を取ると書いています。一文を、まず構造、次に道理の順に問えます。

「意を得て象を忘る」は、卦象が要らないという意味ですか。

違います。王弼は同じ「明象」の中に「象を立てて以て意を尽くす」とも書いています。退けているのは乾を馬に固定する類のやり方と、方法を重ねる推し方で、言・象・意の関係を述べているのであり、象をなくしてはいません。

『象伝』の「君子は以て」の後の言葉は、予言ですか。

予言ではありません。「以て」の後には、この卦の象にもとづいて君子が何をしうるかが書かれます。井の「民をねぎらい助け合いを勧める」がその例で、身の処し方の話であり、ある事柄の結果を告げるものではありません。

この記事は役に立ちましたか?

資料・出典

  1. 维基文库《四库全书总目提要》卷一(经部总叙、易类小序,含《周易郑康成注》《新本郑氏周易》提要) ↗
  2. 维基文库《周易》井、比、复、乾、泰各卦页(含彖传、象传)与《易传·说卦》第七、八、十一章 ↗
  3. 维基文库《周易正义》井卦、复卦(注与孔颖达疏) ↗
  4. 维基文库《周易略例·明象》(王弼) ↗

続けて読む

十翼を読む:彖・象・繋辞は何を見るか ↗

易経・梅花・六爻:共通の卦と異なる方法 ↗

八卦:三爻の構造と基本の象――八つの小さな卦を『説卦伝』で読む ↗