豫卦:地から雷、従って動く
コンテンツ版 · · 資料・出典
豫は第十六卦で、雷が地から出て、第四位だけが陽爻です。彖伝は「従って動く」を卦・天地・聖人の三つで言い、大象は音楽で雷に応え、爻辞では豫の字が四つに出て二つには出ません。
要点を先に約6分で読めます
豫の定義は「従って動く」の一句で、彖伝はそれを卦から天地、聖人へと広げます。大象では先王が音楽で雷に応えます。
- 豫は震(雷)の下に坤(地)が重なる卦。説卦伝の「震は動」「坤は順」がそのまま彖伝の定義になり、九四が唯一の陽爻。
- 彖伝は「従って動く」を、この卦・天地・聖人の三つの段階に当てはめ、後の二つに日月は過たず・四季は違わず、刑罰は明らかで民が服す、が続く。
- 大象の主語は「先王」で、行いは音楽・徳の尊重・祭祀。爻辞では初六・六三・九四・上六に豫の字があり、六二と六五にはない。

先に読む
地から雷が出る:九四だけが陽爻
豫は第十六卦で、下卦が坤(地)、上卦が震(雷)です。九四は唯一の陽爻で、その下には陰爻が三本、上には二本あります。卦名の「豫」は一語に訳しにくい字ですが、彖伝の定義は短く、「従って動く」です。
豫と錯卦の小畜:豫の唯一の陽爻と小畜の唯一の陰爻は、どちらも第四位にある。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
押さえる三つの点
- 震と坤
- 説卦伝は震を「動」、坤を「順」と呼び、さらに「雷が物を動かす」とも述べる。一方は外へ動き、一方は内で従う。
- 豫
- 序卦伝は「大きなものを持ちながら謙る」の後に置く。彖伝の定義は一句、「従って動く。これが豫である」。
- 剛
- 彖伝の冒頭「剛が応じられて志が行われる」の剛は九四のこと。陰爻がみな応じ、志が通る。
下の坤は従うこと、上の震は動くこと。卦の二つの半分が、そのまま彖伝の定義の二つの半分です。逆らって動くのではなく、従って動く。
彖伝の「従って動く」:卦から天地、聖人へ
彖伝は長いのですが、骨組みは、一つの句が三つの段階で使われていることです。
豫は、従って動くことである。だから天地もそのとおりで、まして諸侯を立て軍を出すときはなおさらだ。天地は従って動くので、日月は軌道を外れず、四季は狂わない。聖人は従って動くので、刑罰は明らかで民は服する。豫の時の意義は、まことに大きい。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
一段目は定義そのもので、彖伝はこの句をもう一度繰り返します。二段目は範囲を天地まで広げ、従って動くから日月は軌道を外れず、四季は狂わない。三段目は人の世のことで、聖人が従って動くから、刑罰は明らかで民が服する。一段目と二段目の間に「まして諸侯を立て軍を出すときはなおさらだ」と問いが挟まれ、卦辞の「諸侯を立て、軍を出すのによい」を受けています。結びは独立した感嘆で、「豫の時の意義は、まことに大きい」。
卦辞と大象:諸侯を立て軍を出す、音楽を作り徳をたたえる
卦辞は一句だけ、「諸侯を立て、軍を出すのによい」。大象は、重心を政と軍から音楽へ移します。
雷が地から出て鳴り響くのが豫。先王はこれにならって音楽を作り、徳をたたえ、盛大に上帝に供え、祖先を並べて祀った。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
大象の主語は君子が多いのに、豫は「先王」で、行いも大きく、音楽を作る、徳をたたえる、盛大に供える、祖先を並べて祀る、と続きます。象には地から起こる雷の音があり、行いには音楽がある。両端が音でつながっているのは文字の上で見て取れる呼応ですが、本文はそれを明言していません。
六つの爻辞:四つに豫、二つには豫がない
六つの爻辞のうち、初六・六三・九四・上六には「豫」の字があり、その前に鳴・盱・由・冥の語が付きます。六二と六五には豫が出ません。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
初六は「声に出す楽しみ。凶」。楽しみを声に出してしまうのがよくなく、小象は「志が尽きる」と言います。六二は「石のように堅く、一日を終えない。正しくて吉」で、小象は「中正だから」。六三は「見上げる楽しみ。悔いがある。遅れてもまた悔いがある」。「盱」は目を見開いて上を仰ぐこと、小象は「位が当たらない」です。
九四は「楽しみはここから生まれる。大いに得る。疑うな。仲間が…」。「朋」の句の字には別の字で書く本文もあり、意味も分かれるので、存疑のまま置くのが安全です。小象の「志が大いに行われる」は、彖伝冒頭の「志が行われる」と呼び合っています。六五は「病が続くのに、長く死なない」。小象は、剛に乗っているからだと言い、つまり陽爻のすぐ上にいて、「中がまだ亡びていない」。上六は「暗がりの楽しみ。成っても変わりがある。咎はない」で、小象は「どうして長く続けられよう」。
謙・小畜・蹇:豫の隣の卦、そして序卦での位置
豫を上下逆にすると謙になり、唯一の陽爻は第四位から第三位へ下がります。二つは互いの綜卦です。錯卦は、冒頭の図の右にある小畜で、豫の陰五本と陽一本をすべて反対にすると、陽五本と陰一本になり、位置は第四位のままです。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
互卦は、中の四爻を取り出し、二〜四爻を下卦(艮)、三〜五爻を上卦(坎)に組み替えた蹇です。第三・第四爻が二度使われるので、豫のただ一つの九四が、蹇では二本の陽爻になります。
序卦伝は豫を謙の後ろに置き、さらに豫には必ず随う、として次を随にします。
大きなものを持ちながら謙る者は、必ず楽しむ。だから豫が続く。
読んだあとの疑問
「豫」は楽しみ、備え、安らぎのどれですか。
本文は一語で定義していません。あるのは彖伝の「従って動く」だけです。序卦伝は「大きく有って謙る」の後に置き、大象は音楽を語るので、楽しみと備えの両面を残して読むのが無難です。
なぜ六つの爻のうち二つは「豫」を言わないのですか。
六二は「石のように堅く、一日を終えない」、六五は「病が続くのに長く死なない」で、どちらも豫が主語ではありません。「鳴く」「見上げる」と「由る」「冥い」の間に挟まれていて、見落としやすい箇所です。
九四の「朋…」の句はどう読むのですか。
この句の一字には別の字で書く本文があり、意味も昔から分かれています。確かなのは「楽しみはここから生まれる、大いに得る、疑うな」と小象の「志が大いに行われる」です。「朋」の句は、補わず存疑と注記して読みます。
この記事は役に立ちましたか?
資料・出典
続けて読む
謙卦:地の中に山、「名の聞こえる謙り」から「多いところから取る」まで ↗


