易経の版本:伝世本と出土資料
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『周易』には伝世本・注疏本・出土の帛書や竹簡・現代の訳注があり、来歴も文字も同じではありません。三つの図表で、本サイトが引く通行本、三つの出土資料、いくつかの異文を整理し、版本の記録の仕方を示します。
要点を先に約9分で読めます
『周易』は一種類ではありません。伝世の通行本、注疏を付けた本、出土の帛書や竹簡、現代の訳注は、来歴も文字も異なります。引用する前に、手元の一冊がどれかを確かめます。
- 本シリーズが引くのは通行本で、照合先はウィキソース(中国語版)の各卦の頁、『易伝』の頁、『周易正義』の頁です。
- 三つの資料は来歴が別です。馬王堆帛書は1973年に長沙で、阜陽漢簡は1977年に安徽省で出土し、上博簡は1994年から香港で購入されて出土地が分かりません。
- 卦名の字や卦の並びは資料によって異なります。これは記録すべき違いであり、どれが原型に近いかを示す証拠にはなりません。

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同じ『周易』でも、手元はどの一冊か
『周易』を読むとき、最初に確かめたいのに飛ばされやすいのが、手元の一冊の種類です。伝世の通行本、注疏を付けた本、出土の帛書や竹簡、現代の訳注は、どれも「周易」と呼ばれますが、文字、並べ方、付いている説明が同じではありません。
来歴別の整理:伝世本、出土地の記録がある資料、購入された資料。記録は分けて書きます。分け方は優劣ではありません。
図は、以下で使う資料を来歴で三つに分けたものです。伝世本は、世代を重ねて書き写され、刊行されて伝わった書物です。出土資料は帛や竹簡に書かれた早い時期の写本で、ここで扱う三つはいずれも1973年以降に出土または入蔵しました。うち二つは出土地を調べられ、一つは後から購入されたため、出土地が分かりません。訳注本は、そうした本文を現代の人が整理したもので、どの本文に従ったかを別に記録します。
四種類の「本」
- 伝世本
- 代々伝わってきた本文です。本シリーズが照らし合わせる、ウィキソースの『周易』各卦の頁は、この種類に入ります。
- 注疏本
- 経と伝の文字に、注と疏を付けた本です。注は経と伝の文字を解釈し、疏はその注をさらに解釈します。
- 出土資料
- 帛や竹簡に書かれた早い時期の写本です。馬王堆帛書、阜陽漢簡、上博簡などがあります。
- 訳注本
- 現代の訳者や注釈者が整理した本です。従った底本を書く必要があります。
伝世本:同じ書名、いくつもの頁
ウィキソースには、「周易」を書名に含む頁が複数あります。各卦の本文だけを載せた頁もあれば、注疏を付けた本もあり、署名、底本、巻の分け方の説明は頁ごとに違います。
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注疏本は三つの層を一冊にまとめています。いちばん下に経と伝の文字、その上に王弼と韓康伯の注、いちばん上に孔穎達の疏です。『周易正義』の頁の見出しに載る『四庫全書総目』の提要は、疏の体裁を、注文を解き明かすことを主とし、はみ出すことを望まないものだと述べています。疏は注に従うもので、別の説を立てるものではない、という意味です。
ウィキソースの三つの頁
宋刊本の影印
頁の見出しに、魏の王弼注、晋の韓康伯注、王弼撰の略例、唐の邢璹注とあり、上海の涵芬楼が蔵する宋刊本によると記されています。巻は一から九までで、略例序と略例の巻十が別にあります。
文淵閣四庫全書第七冊
王弼・韓康伯の注、陸徳明の音義、孔穎達の疏と署名されます。本文は巻一から巻十三までで、周易略例が付きます。
魏の王弼・晋の韓康伯注、唐の孔穎達疏
見出しに三人の名があり、そこに載る『四庫全書総目』の提要には、巻数についての目録の記述が一致しないことが書かれています。
この提要は巻数も記しています。序は十四巻、唐志は十八巻、書録解題は十三巻とし、提要が指す一冊は十巻だといいます。四庫本の『周易注疏』はさらに十三巻に分けています。同じ書でも巻数の記述がこれほど違うため、巻数が確かな位置を指すのは、同じ一冊の中だけです。
出土資料:三つの資料、三つの来歴
通行本のほかに、『周易』を含む早い時期の写本として、馬王堆帛書、阜陽漢簡、上博簡の三つがよく挙げられます。見つかり方はそれぞれ違います。以下は、ウィキペディア(中国語版)の項目で読めた内容です。
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三つの資料、項目の記述から
前漢 · 湖南省博物館
1973年に長沙の馬王堆三号墓から出土し、帛に書かれています。簡帛の一覧では「周易経伝」と記され、項目には、その『易伝』が今本とかなり異なるとあります。
前漢 · 阜陽市博物館
双古堆漢簡とも呼ばれます。1977年に安徽省阜陽市潁州区から出土し、竹簡と木簡が数千片(数え方によって五千余から九千余まで幅があります)。内容には『詩経』や『周易』など多くが含まれます。
戦国 · 楚 · 上海博物館
1994年から、上海博物館が香港の骨董市場で順次購入しました。最初は5月からの1200余枚、同じ年のうちにさらに一組があり、研究の概説では合わせて約1700枚とされます。数字は資料によって少し違います。『周易』は、2003年12月に出た第三冊に収められています。
三つは、手に入った経緯が違います。
- 上博簡は考古学的に出土したものではないため、もとの出土地が分かりません。項目は、出た墓が戦国中期の後半から後期の前半、つまり紀元前300年ごろと推測するにとどまります。字体による年代判断と放射性炭素年代の結果は完全には一致せず、学者の説は分かれています。
- 馬王堆帛書と阜陽漢簡には、調べられる出土地があります。
異文:同じ卦、いくつもの書き方
資料を並べると、まず目に入るのは字の違いです。同じ卦でも、卦名が別の字で書かれていることがあります。
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表の書き方は、ウィキペディア(中国語版)の「六十四卦」の項にある「部分古版出土文献対照」の表によります。その表は一部の卦だけを挙げており、空欄は表に載っていないという意味です。その資料にその卦がない、という意味にはなりません。
二種類の異文
卦名が別の字で書かれる
その表では、帛書は乾を鍵と書き、臨を林と書きます。遯は三通りで、帛書、阜陽漢簡、上博簡に一つずつ見えます。上博簡は豚と書かれ、この字形を遯とどう読むかは整理者の釈読によります。阜陽漢簡と上博簡の欄の書き方は、今のところこの百科の表でしか確認できていません。
頁自身が付けた小さな注
ウィキソースの乾の頁では、彖に曰くの「大和を保合す」のあとに「一に太和に作る」という小注があり、本によってはここが「太和」と書かれることが分かります。
卦の並びも違います。ウィキソースの『易伝』の頁にある六十四卦の一覧は、乾・坤・屯・蒙で始まります。ウィキペディア(中国語版)「六十四卦」の項に記された馬王堆帛書の並びは、乾のあとに否・遯・履が続きます。その項の説明では、帛書はまず外卦(上の卦)でまとめ、その中を内卦(下の卦)の順に並べています。山東大学の易学研究センターのサイトにある楊賢「帛書『周易』浅析」は、鄧球柏の校釈を引いて、最初の組を帛書の字で鍵・婦・掾・礼の順に挙げており、この四つの卦と対応します。
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版本を記録する三つの問い
ここまでを短い一覧にまとめます。引用するときも、訳注を読むときも、まず三つを書き留めると、他の人が同じ箇所を探せます。
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どの本か
書名と版を書きます。伝世の卦の頁か注疏本か、出土の帛書か竹簡か、訳注本ならどの底本に従うか。ウェブの頁なら、サイト名と頁名も書きます。例:ウィキソース「周易/乾」。
誰が整理したか
訳注者や整理者、出版情報、年を書きます。注と疏の署名は分けて書きます。『周易正義』では、注と疏に別の人が署名されているからです。
どの頁か
頁、巻、章を書き、頁に異文の小注があればそれも記します。二つの資料を比べるときは、それぞれを別に記録します。
版本は記録であって、判定ではありません。十翼の各篇の書かれ方と読み方は、十翼を読むで扱います。
読んだあとの疑問
年代が古い出土資料のほうが、信頼できるのですか。
そうとは限りません。年代の古さ、完全さ、来歴の確かさは別々の問いです。上博簡が出た墓は紀元前300年ごろと推測されますが、簡は購入されたもので出土地は分かりません。違いは違いとして記録します。どれが原型に近いかは、これらの頁からは決まりません。
訳注本を読むとき、ノートには何を書けばよいですか。
書名、訳している底本、訳注者、出版情報、引用した頁か章です。底本が分からないと、訳がどの文字に従ったのかを後から確かめられません。
同じ卦の原文が、サイトによって字が違うのはなぜですか。
底本が違う場合、繁体字と簡体字の変換、頁自身が付けた異文の注などが原因になります。比べる前に、各頁が示す底本を確かめます。
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資料・出典
- 維基文庫・周易(各卦頁:周易/乾「保合大和」附注「一作太和」、周易/遯;六十四卦速查表)、易傳(十翼篇目與六十四卦列表)、周易正義(頁首署名,及頁首所錄《四庫全書總目》提要)、四庫全書總目提要/卷001(周易正義條)、周易注疏 (四庫全書本)、周易 (四部叢刊本)(署名、底本、分卷) ↗
- 中文維基百科・六十四卦(「馬王堆漢墓」卦序;「部分古版出土文獻對照」表;百科條目,二手)、易經(「近代考古研究」;百科條目,二手) ↗
- 中文維基百科・簡帛列表(馬王堆帛書、阜陽漢簡、上博簡各列)、馬王堆帛書周易、馬王堆帛書、上海博物館藏戰國楚竹書(百科條目,二手;上博簡數量依研究綜述,各處略有差異) ↗
- 山東大學易學與中國古代哲學研究中心・楊賢《帛書〈周易〉浅析》(帛書卦序第一組鍵、婦、掾、禮……;僅核對搜索摘要,未逐字讀頁面,二手旁證) ↗


