旅卦:旅人の宿・路銀・従者
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旅は六十四卦の第五十六卦で、上が離(火)、下が艮(山)。卦辞の「小さな通り」、大象の「明らかに慎み、獄に滞らせない」、そして旅人の宿・路銀・従者の得失を数える六つの爻辞を読みます。
要点を先に約6分で読めます
旅卦の爻辞は、旅人の持ち物帳のように読めます。宿、路銀、従者。三つ揃う爻があり、宿を焼かれて従者を失う爻があり、最後の爻では巣まで焼かれます。
- 旅は離(火)の下に艮(山)を重ねた卦。彖伝は「止まって明るさに寄りそう」とまとめる。下の卦が止まり、上の卦が光に寄りそう。
- 大象には旅人が出てこない。山の上を燃えて過ぎ、とどまらない火の姿を取り、「明らかに慎んで刑を用い、獄に事を滞らせない」に落とす。
- 爻辞には宿(宿・場所・巣)、金品(路銀・斧・牛)、従者が繰り返し出る。六二は三つ揃い、九三は二つを失い、上九は巣まで焼かれる。

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山の上の火:下が艮、上が離
旅の上半分は離(火)、下半分は艮(山)です。説卦伝は艮に「止まる」、離に「寄りそう」の一字を与え、別の箇所では離を「明るさ」とも言います。下から数えると、陰爻が二本、陽爻が二本、陰爻が一本、陽爻が一本。艮は陰二本の上に陽が一本、離は陽・陰・陽で、陰爻が二本の陽爻の間に入っています。
旅と錯卦の節:錯卦は六本すべての陰陽を入れ替えたものです。
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旅卦に出てくる三つの言葉
- 旅
- 自分の居場所を離れ、外にいる人。序卦伝は豊のあとに置く。大きさを極めれば居場所を失う、だから旅が続く。
- 宿
- 旅人が夜に泊まる場所。六二ではそこに着き、九三では焼かれる。
- 資斧
- 路銀と斧。旅人が持ち歩く金品と道具、と読まれることが多い。
小さな通りと、旅人の正しさ
旅の卦辞は「小さな通りがある。旅人は正しさを守れば吉」。「小さな」という限定が印象的で、彖伝はこれを卦の形で説明します。
旅、小さな通りがある。柔が外の卦の中ほどを得て、剛に従い、止まっては明るさに寄りそう。だから小さな通りがあり、旅人は正しさを守れば吉となる。旅の時というものの意味は、なんと大きいことか。
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この三つは、図の線を数えれば確かめられます。旅の二つの中位(二と五)はどちらも陰爻で、「柔が外の卦の中ほどを得る」のは六五、上の卦、つまり「外」にある爻です。下に九四、上に上九があって、二本の陽爻に挟まれる形が「剛に従う」。「止まって明るさに寄りそう」は二つの卦を合わせた読みで、下の艮は止まり、上の離は光に寄りそう。止まりながら光のほうを向く旅人だから、「小さな通り」にとどまります。最後の「旅の時の意義は大きい」は、旅を「時」の中に置く感嘆です。それ以上の説明はありません。
大象:山の上の火、明らかに慎み、滞らせない
旅の大象には、旅人が出てきません。
山の上に火がある、これが旅。君子はこれにならい、刑罰を明らかに慎重に用い、獄に事件を滞らせない。
山の上の火は、燃え広がって過ぎていき、一か所に長くとどまりません。君子はここから三つの語を得ます。明らか、慎重、滞らせない。伝統的には卦の形に合わせて読まれます。離は明るさ、艮は止まること。止まって軽々しく動かないのが慎重さで、とどまらない火は、事件を獄に置いたままにしないことにあたります。
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この一文には「旅人」も「旅」も出てきません。大象が借りるのは火の足取りで、先へ進み、もとの場所にとどまらない姿です。
六つの爻:旅人が持つもの、失うもの
六つの爻辞のうち四つは、旅人の持ち物を一つずつ数えています。泊まる場所、持ち歩く金品、連れている人。
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表にない二つの爻は、別のことを書いています。いちばん下の初六は「旅人が細かなことにこだわる。それが自ら災いを招くもと」。小象は「志が行き詰まっている」と評します。六五は「雉を射て、矢を一本失う。最後には誉れと任命を得る」。小象は「上に届く」と言い、上の者のところまで伝わった、という意味です。
表に戻ります。六二はすべてを持つ爻で、小象は「最後まで落ち度はない」と言います。九三は「宿を焼かれ、従者を失う」。小象はまず「すでに痛手だ」と言い、続けて、旅の身で下の者とこう関われば、筋が通らなくなる、と添えます。九四は落ち着く場所を得て、路銀と斧も手にしますが、「私の心は晴れない」。小象は二句で評します。まだ位を得ていない、心がまだ晴れない。最上の上九では、鳥が巣を焼かれ、旅人は先に笑い、あとで泣き叫びます。「牛を易で失う」の「易」は、田の境と読む説と、うかつさと読む説が知られています。小象は「結局、誰の耳にも届かない」で結びます。
六つを並べると、起伏のある線になります。初六は自らもめごとを招き、六二はすべてを持ち、九三は二つを失い、九四は持っていても晴れず、六五は失って得て、上九は巣を焼かれ牛を失います。
豊・大過・節:旅の隣の卦と、豊のあとに置かれる理由
旅を上下逆にすると豊になるので、豊は旅の綜卦です。互卦は大過で、旅の第二〜四爻が巽、第三〜五爻が兌になり、下が巽、上が兌の形です。錯卦は節で、上の図に出ています。
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序卦伝の説明は一行です。
大きさを極めた者は必ず居場所を失う。だから旅が続く。
豊は「大」で、大を極めれば居場所を失うので、旅は豊のあとに置かれます。旅の次の卦は巽で、序卦伝は、旅人はどこにも受け入れられないので「入る」が続く、と言います。錯卦の節は反対向きで、初めの二つの爻はどちらも庭にとどまり、外へ出ません。旅は、いつも外にいる人の卦です。
読んだあとの疑問
旅卦は、旅に出るのはよくないという意味ですか。
そうは書かれていません。卦辞は「小さな通りがある。旅人は正しさを守れば吉」。六つの爻辞のうち三つは失うこと(初六・九三・上九)、三つは得ること、または最後に誉れを得ること(六二・九四・六五)を書いています。
「資斧」とは何ですか。
字面では路銀と斧。旅人が身につけて行く金品と道具と読まれることが多いようです。旅の九四は「資斧を得る」、すぐ次の巽の上九は「資斧を失う」と書きます。
旅と豊はどういう関係ですか。
互いに綜卦です。旅を上下逆にすると豊になります。豊は盛んで大きいこと。序卦伝は、大きさを極めると居場所を失うので旅が続く、と説明します。
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