履卦:虎の尾を踏む三つの結び
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履は下が兌、上が乾で、陽爻五本のなかの陰爻は六三の一本だけ。卦辞「虎の尾を踏む」、大象「上下をわきまえる」、六つの爻辞が描く六通りの歩き方を読みます。
要点を先に約5分で読めます
履は一つの句で成り立っています。虎の尾を踏む。この句は卦辞・六三・九四に一度ずつ出て、そのたびに結びが違います。六つの爻辞は、飾りのない履物から、歩いた跡を振り返るまで、六通りの歩き方を書きます。
- 履は乾(天)の下に兌(沢)を置き、陰爻は第三位の一本だけ。彖伝は「柔が剛を踏む」と解き、「悦んで乾に応じる」と添える。
- 三つの虎の尾に三つの結び。咬まれずうまく通じる、咬まれて凶、おそれ慎んで終わりは吉。六三について小象は「位が当たっていない」と理由を言う。
- 大象は「上下をわきまえ、民の志を定める」で終わる。爻辞は飾りのない履物、平らな道、片目、おそれ、思い切った一歩、振り返りと進む。

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天の下に沢:履の形
履の上卦は乾(天)、下卦は兌(沢)で、「兌下乾上」と読みます。陰爻は第三爻ただ一本で、ほかの五本は陽爻です。説卦伝では、乾が「健(力強い)」、兌が「説(悦ぶ)」。
履と錯卦の謙:陰が第三位にある形と、陽が第三位にある形は、互いの錯卦です。
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まず三つの語
- 履
- 卦名で、字面は踏む、歩いて行くこと。彖伝は「柔が剛を踏む」と解く。卦の形にも対応がある。六三の陰爻が、九二の陽爻の上に重なっている。
- 虎の尾
- 卦辞・六三・九四の三か所に出るもの。尾を踏まれた虎が振り向くかどうかが、この卦全体を宙づりにする問いになっている。
- 咥
- 虎が咬みつくことを表す字。爻辞で「咬まれる」と訳したのがこの字で、「咬まれない」はその打ち消し。
同じ句に、三つの結び
「虎の尾を踏む」は卦のなかに三度出ます。卦辞に一度、六三に一度、九四に一度。踏む尾は同じなのに、文の後半が違います。
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卦辞の「咬まず」について、彖伝は理由を卦の徳に置きます。「悦んで乾に応じる」。兌は悦びで、上の乾に応じるのです。六三の「咬まれる」には、小象が短く答えます。「位が当たっていない」。陰爻が第三位にいて、この位は陽の位だからです。九四の「愬愬」は、おそれ慎む様子と読むのが一般的で、小象は「志が行われる」と言います。
履とは、柔が剛を踏むことである。悦んで乾に応じるので、虎の尾を踏んでも人に咬みつかれず、うまく通じる。剛で中正、帝の位を踏んでやましくないのは、光り輝くからだ。
最後の二句は九五に落ちます。剛で、中にあり、位が正しく、帝の位を踏んでもやましくない。だから「光り輝く」と言うのです。
大象:上に天、下に沢、上下をわきまえる
履の大象は「上に天、下に沢があるのが履。君子はこれにならい、上下の別をわきまえ、民の志を定める」。前半は卦の象で、天は高く、沢は低く、それぞれの場所にいます。後半は行いで、上と下を見分けること、そして多くの人の志を落ち着かせることです。
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六つの爻:六通りの歩き方
履の六つの爻辞は、どれも「歩く」ことを書きます。何を履くか、どの道を行くか、どう足を運ぶか、歩いたあとどう振り返るか。
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初九は「飾りのない履物で行く。進んでも咎めはない」。小象は「独り行くのは自分の願いのままに」と評します。九二は「踏む道は平らかで、世を離れた人は正しさを守って吉」、小象は「心のなかが乱れない」。
九四でまた虎の尾に戻りますが、今度は「おそれ慎めば、終わりは吉」。九五は「思い切って踏み出す。正しくても危うい」。夬は決断すること、決断して歩むのは、正しくても危うさがあります。上九は「踏んできた跡を振り返ってその吉凶の兆しを考え、引き返せば大いに吉」。歩いた足取りを見直し、その兆しを確かめてから戻る。小象は「大いに吉が上にあるのは、大きな慶びがあるから」と言います。
小象には「位」の字が二度出ます。一度は当たらず、一度は正しく当たる。六三は陰爻が陽の位にいるので「位が当たっていない」、九五は陽爻が陽の位にいるので「位が正しく当たっている」。
履の隣の卦:謙・小畜・家人
履の錯卦は謙です。陽が一本きりの側から見ても、陰が一本きりの側から見ても、はみ出た一本はやはり第三位に立っています。綜卦は小畜で、図を逆さにすると陰爻が第四位に上がり、二つの卦は同じ形を両端から読むことになります。互卦は家人で、中の四本を二つに割り、新しい上卦と下卦を作ると得られます。
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物が蓄えられたのち、礼が生まれる。だから履が続く。
序卦伝は履を礼につなげます。履のあとは泰で、序卦伝の言い方は、この道を渡りきったあとにようやく安らぐ、ということです。雑卦伝が履に与える評は、とどまらないという意味の短い言葉です。
読んだあとの疑問
「虎の尾を踏む」は危険の予告ですか。
三か所とも前半の句は同じで、後半が違います。虎の尾だけを見るのではなく、後半の句と、注釈が挙げる理由を並べて読みます。
六三の「眇」「跛」とは何ですか。
眇は片目がよく見えないこと、跛は足が不確かなこと。爻辞は「見える」「歩ける」と言い、小象がすぐ「はっきり見るには足りない」「ともに行くには足りない」と続けます。少しは見え、少しは歩けるが、していることを支えきれない、という比喩です。
「素履」とはどんな履物ですか。
素は飾りがないこと、素履は字面どおり飾りのない履物です。初九は「進んでも咎めはない」と続き、小象は「独り行くのは自分の願いのままに」と評します。
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