明夷卦:明るさが地に入る、暗さを用いる
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明夷は六十四卦の第三十六卦で、上が坤(地)、下が離(火、日)、明るさが地の中に入ります。彖伝が挙げる文王と箕子、大象の「暗さを用いて明るい」、六つの爻辞で傷が翼から腿、腹、心へ進む順序から、光が押さえられる姿を読みます。
要点を先に約6分で読めます
明夷の「夷」は傷のことで、明夷は傷ついた明るさです。原文はその傷を奥へ奥へと書いていきます。翼、左の腿、左の腹、心、そして最後は、天に登った太陽が地に入る姿です。
- 明夷は坤(地)の下に離(火、日)を重ねた卦。上の三本がすべて陰爻で、下の離をそっくり押さえる。序卦伝は「夷とは傷のこと」と説明する。
- 彖伝は二人の人でこの卦を説明する。内が文明で外が柔順なのが文王、内に難がありながら志を正しく保つのが箕子。大象の「暗さを用いる」は、晋の「自ら徳を輝かせる」と対になる。
- 爻辞に書かれる傷は、翼、左の腿の順に進み、九三は狩りで大首を得る場面に変わり、六四で左の腹と心に至る。六五は箕子に当たり、上六は光が天に登り、のちに地に入る姿を書く。

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明るさが地に入る:離の上に陰が三本
明夷は、上が坤(地)、下が離(火、日)の卦で、逆さにすると前の一篇の晋になります。まず目に入るのは、上の三本がすべて陰爻で、下の三本が陽・陰・陽であること。離の光は、三本の陰爻の下に押さえ込まれています。
明夷と綜卦の晋:綜卦は全体を上下逆にしたもので、明夷で上から押さえる三本の陰爻は、晋では下から支えます。
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序卦伝は明夷を晋の次に置き、卦名の「夷」の字を説明します。
進む者は必ずどこかで傷を負う。だから次に明夷を受ける。夷とは傷のことである。
夷は傷ですから、明夷は「明るさが傷ついたもの」。この一篇は、その傷を読みます。どこに落ち、どう伝わり、誰が受けるのか。
卦辞と彖伝:文王と箕子
卦辞は三字、「困難のなかで正しさを守るのによい」。彖伝はそれを説明するとき、二人の名を挙げます。
明るさが地の中に入る、これが明夷。内は文明で外は柔順、そうして大きな難を受ける。文王はそうした。「困難のなかで正しさを守るのによい」とは、その明るさを隠すことだ。内に難がありながら志を正しく保つ。箕子はそうした。
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「内は文明で外は柔順」は、卦の形から読み取れます。内側の下卦、離は明るさ。外側の上卦、坤は従順です。「大きな難を受ける」とは、その姿で大難に耐えることで、彖伝は文王がそうしたと言います。後半は卦辞の説明で、「困難のなかで守るのによい」は「その明るさを隠す」こと。内に難があっても志は正しく保てる、と言い、彖伝は箕子がそうしたと述べます。
二人の人、二つの境遇が、一つの卦に書かれています。箕子は六五の爻辞でもう一度現れます。
大象:暗さを用いる、晋と並べて
明夷の大象には、反対の意味の語が一組あります。暗さと明るさです。
明るさが地の中に入る、これが明夷。君子はこれにならい、人々に臨むとき、暗さを用いて明るくある。
「臨む」は向き合って治めること、「人々に臨む」は大勢に対すること。「暗さを用いて明るい」は、暗さを使い、それでも明るさが残る、という意味です。前の卦、晋の大象と並べると一対になります。
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晋は光が地の上に出る姿で、行いは「自ら輝かせる」。明夷は光が地の中に入る姿で、行いは「暗さを用いる」。前提の「人々に臨む」も大切です。これは人に向かうときの行いで、家に引きこもるときの行いではありません。
六つの爻辞:翼から心へ進む傷
明夷の六つの爻辞には「傷ついた明るさ」という語が繰り返し現れ、あとには多く体の部位が、奥へ奥へと続きます(九三と六五は例外)。
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初九の「明るさが飛びながら傷つき、翼を垂れる」は、飛んでいる光が傷つき、翼がだらりと下がる姿です。君子は旅に出て三日食べず、小象は義によると言います。六二の「左の腿を傷つける」は、たくましい馬で救って吉。九三の「南の狩り」は「その大首」を得て、「急いで守ってはならない」と添えます。小象は、志が大いに得られると言います。
六四で言葉が変わります。「左の腹に入り、傷ついた明るさの心をつかむ」。ここでの読みでは「入る」の字が重要で、六四は上卦の坤のいちばん下の爻、光が離から坤へ入る、まさにその一歩です。傷も翼と腿から腹へ入り、さらに傷ついた明るさの心に達します。小象は心の内を得ると言います。
六五は一句だけ、「箕子の明夷、守るのによい」で、小象は「明るさは消せない」。彖伝の箕子です。上六の「明るくなく暗い」は、伝統的には明るいのではなく暗いと読み、続くのは一枚の絵です。「初めは天に登り、のちに地に入る」。小象は前半と後半に一言ずつ。天に登るのは「四方の国を照らす」こと、地に入るのは「法則を失う」ことです。
晋・訟・解:明夷の隣の卦と、家人へのつながり
明夷を上下逆にすると晋になります。だから明夷の綜卦は晋です(上の図)。錯卦は訟、互卦は解で、明夷の中の四本の爻(二〜五爻)を分けて重ねると、二・三・四爻が下の坎、三・四・五爻が上の震になります。
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冒頭で引いた序卦伝の「進む者は傷を負う」は、明夷への導入の言葉です。明夷の次は家人で、序卦伝が言うのは、外で傷ついた者は、家に戻らなければならない、ということです。日の出の晋から、光が押さえられる明夷、そして帰宅の家人へ。三つの卦は続けて読むようにできています。
読んだあとの疑問
明夷卦は凶の卦ですか。
卦辞は「困難のなかで正しさを守るのによい」です。爻辞には「吉」もあれば、「急いで守ってはならない」という戒めもあり、全体が凶と書かれているわけではありません。
「暗さを用いて明るい」は、愚かなふりをする意味ですか。
字面からはそうではありません。暗さを用い、それでも明るい。大象はこれを「人々に臨むとき」のあとに置いていて、人に向かうときの行いを言います。いつそうするかは、原文はこれ以上述べていません。
明夷と晋はどういう関係ですか。
互いに綜卦です。明夷を逆さにすると晋になります。晋では離の光が上にあり地の上に出て、明夷では下にあって坤に覆われます。
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晋卦:地の上に明るさ、「一日に三度の引見」から「角に進む」まで ↗


