升卦:「許されて升る」から「闇の中で升る」へ
コンテンツ版 · · 資料・出典
升は六十四卦の第四十六卦で、上が坤、下が巽、地の中で木が育つ形です。彖伝の柔らかい語、大象の「小を積んで高く大きくなる」、六つの爻辞で升ると祭りが交互に現れ、上六の「冥く升る」に至る流れから読みます。
要点を先に約6分で読めます
升の爻辞では、「升る」の字が一・三・五・上に出て、二と四には祭りが出ます。一段升り、一度祭り、いちばん上では「冥く升る」になり、「休まぬ正しさ」が添えられます。
- 升は坤(地)の下に巽(風・木)を重ねた卦。説卦伝で巽は木であり高さでもあるので、大象は「地の中に木が生じる」と言う。
- 彖伝が升を語る言葉は、ほぼ柔らかい語ばかり。柔が時に従って升る、入って従う。硬いのは「剛が中にあって応じる」の一か所だけ。大象は方法を添える。小を積んで高く大きくなること。
- 初六・九三・六五・上六は升ることを、九二・六四は祭りを書く。上六の小象は「消えて富まない」、序卦伝は升って止まなければ必ず困になると言う。

先に読む
地の中の木:下が巽、上が坤
まず卦の形を見ます。いちばん下に陰爻が一本、その上に陽爻が二本、さらにその上に切れた陰爻が三本。下の三本が巽、上の三本が坤です。説卦伝で巽の象には木があり、高さもあります。坤は地。木が地の中にあって、上へ伸びる。この形は、大象の「地の中に木が生じる」とぴたりと合います。
升と錯卦の无妄:錯卦は六本すべての陰陽を入れ替えたもので、升の三本の陰爻は、无妄ではすべて陽爻になります。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
升にある三つの語
- 升
- 登ること、高いところへ行くこと。序卦伝は、集まったあとに置く。一所に寄り合ったものが、そこから高みへ向かうのを升と言う。
- 南征
- 卦辞の最後の「南征吉」は、字面では南へ出向くこと、進むこと、吉。「南」は方角にすぎず、原文はそれ以上説明しない。
- 冥
- 上六の「冥升」の冥は暗いこと。暗いなかで升る。
卦辞と彖伝:升ることを柔らかい語で語る
升の卦辞は「大いに通る。大人に会うのによい。憂えるな。南へ進んで吉」です。彖伝はこれを条件と結果の二層に分けます。
柔らかなものが、時を得て升っていく。入り込んで従い、剛は中を守って上から応じられる。それで大いに通る。「大人と会うのがよい、憂えるな」は、祝うべきことがあるということ。「南へ進んで吉」は、志が行われるということ。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
三つの条件のうち、柔、入る、従うは、どれも柔らかい語です。柔は陰爻、入るは巽、従うは坤の象。硬いのは剛が中を守るという一か所だけで、これは九二が下卦の真ん中にいて、上の六五が応じることを指します。彖伝は升ることを語るのに、「争う」「突く」といった字を使わず、時に従って升ると言います。
結果の三句は、卦辞の一句ずつに対応しています。「大いに通る」は「元亨」に、「祝うべきことあり」は「大人に会うのによい、憂えるな」に、「志が行われる」は「南へ進んで吉」に。
大象:地の中の木、小を積んで高く大きく
升の大象は「地の中に木が生じる。それが升。君子はこれにならい、徳に従い、小さなものを積んで高く大きくなる」です。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
「徳に従う」の「従う」は、伝統的には「たがわない、沿う」と読まれてきたもので、徳に沿って行うという意味です。後の句が方法で、小さなものを少しずつ積み、高く大きくする。彖伝は「時を得て升る」、大象は「小を積んで高く大きく」と言い、二つを合わせて読むこともできます。一方は時に従うこと、もう一方は積み重ねることです。
六つの爻:升ると祭る、交互に上へ
六つの爻辞の動詞を並べてみると、きれいな調子があります。初六は升る、九二は祭る、九三は升る、六四は祭る、六五は升る、そして上六がまた升る。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
初六は「許されて升る、大吉」。「許される」にあたる字は、信じられる、承知される、という意味で、いちばん下のこの爻が、承知を得て升ります。小象は「上と志が合う」。卦の形からはこう読めます。上の三本も陰爻で、同じ種類で、志が合っています。
九二は「誠があれば、ささやかな禴の祭りで足りる。咎なし」。この半句は、萃の六二にも出てきます。小象は「喜びがある」。
九三は「空の邑へ升る」。卦の形から読むこともできます。九三の上には坤の三本の切れた陰爻があり、さえぎるもののない空の町のようです。小象は「疑うところがない」。
六四は「王が岐山で祭りを捧げる。吉、咎なし」。岐山は、周の人々が早くに活動した土地です。小象は「事に従う」。
六五は「正しくて吉、階を升る」。階は一段ずつ踏むもの。この爻について、小象は「志が大いに叶う」と言います。
上六は「冥く升る、休まぬ正しさによい」。暗いなかで升り、止まらずに正しさを守るのがよい。小象の評は「冥く升って上にあり、消えて富まない」。いちばん上まで升って、「消える」は伝統的には「すり減る」と読まれ、「富まない」は増えないこと。升りきったところでは、さらに上へではなく、止まらない正しさが、この爻を支えます。
萃・无妄・帰妹:隣の卦と序卦
升の綜卦は萃です。升を上下逆にすると、三本の陰爻が上から下へ戻ります。錯卦は无妄で、升のすべての爻の陰陽を入れ替えたもの。互卦は帰妹です。升の第二〜四爻は陽・陽・陰で兌、第三〜五爻は陽・陰・陰で震。兌の上に震が乗る形が帰妹になります。
図を拡大 · 横にスクロールして読む
萃と升の大象を並べて読むと、一方は「沢が地の上」、水が地面に溜まる形、もう一方は「地の中に木が生じる」、木が地の中で育つ形です。どちらも三本の陰爻が地で、一方は下から支え、もう一方は上から覆います。序卦伝は二つをつなぎます。集まったものが高みへ向かうのが升、という順序です。その升のあとについて、序卦伝は「升って止まなければ必ず困になる」と言います。ところが升の上六自身は「休まぬ正しさ」を書いています。一方は止まらない正しさ、もう一方は止まらない升り。この二つの「止まらない」を並べて見る価値があります。
読んだあとの疑問
升卦は昇進や出世の話ですか。
原文の「升」は登ること。許されて升る、空の邑へ升る、階を升る、闇の中で升るなど、爻ごとに行き先が違います。彖伝は「柔が時に従って升る」、大象は木が育ち小さなものが積み上がる様子で、地位を争う調子ではありません。
「冥く升る、休まぬ正しさによい」はどう読みますか。
冥は暗いこと。字面は、暗い中で升ること。「不息の貞」は、止まらずに正しさを守ること。伝統的には、頂上でも守り続けるべきだ、と読むのが一般的です。小象の評「消えて富まない」が、この爻の調子を決めています。升りきったところで、もう増えるものはない。
升と萃はどういう関係ですか。
互いに綜卦で、萃を逆さにすると升になります。萃は沢が地の上にあり、升は木が地の中にある。序卦伝は、集まったものが上へ進むのが升だと言います。「誠があれば、質素な祭りも用いてよい」の一句は、両方の卦に同じ形で出てきます。
この記事は役に立ちましたか?
資料・出典
続けて読む
萃卦:沢が地の上に、「乱れ、そして集う」から「不意の事に備える」まで ↗


